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28:話

ん〜。なんだかこの男子は全く本編とは関係ないような気がするのです。ていうか、この話の中ではこの部分以外での出演は無いと思います。

「あの、ちょっといいかな?」

 友好的に話し掛けてきたその相手は、先ほど目を一瞬だけ合わせた学生だった。

 年齢は私と同じか少し上。

 という事は、中等学校の生徒だろうか。ボタンには初等学校しか無かったが、このラフレシアには中等学校と高等学校もある。ちなみに、大学校は基本的に首都にしかない。

「何でしょうか?」

 微笑みながら、その学生を見詰める。

「いや、ちょっと話がしたくなってね。この町の人じゃあないみたいだったから」

「よく分かったのね」

「そりゃあもう、君みたいなベッピンさんなんて、この町に一握りしかいないからね。住んでいたなら、僕は何度か見掛けて覚えているはずだから」

 真白の歯を見せびらかすようにして微笑む学生は、どことなく好感が持てた。

「私、サザンカ。貴方は?」

「僕はメロン。よく、美味しそうな名前ってからかわれるんだけどね」

 メロンと名乗った学生は、私の隣に腰掛ける。ベンチが軋んだ。

「サザンカか。いい名前だね。確か華国――長江中流域あたりに位置する国――にある花だよね。確か」

「ええ、そうね。そもそも、人名や地名に植物の名前を付けるようになったのは、丁度スパチュラ暦100年の頃だと言われているわ。一番有力なのは、花に信仰を寄せていたこの辺りの民族が人名に花の名前を付け始めた事が切欠だ、という説よね」

「へえ、そうなんだ。サザンカさんは物知りだね」

「そんな事は無いわよ」

「でも、今持っている本、それ凄く難しいと思うけど」

 私は『妖精と御伽噺フェアリーアンドテイル』をヒナンガバ語で読んでいた。この本は、各国の説話や神話や民話や童話をヒナンガバ国独自に書き換えたものを、毎晩就寝前に子供に語り聞かせるという形式で書かれている。

 そして少し前に読み終わったばかりだった。

「これは『妖精と御伽噺』よ。読んだ事、あるでしょ?」

「えっと、うん。学校で一通り読んだけど、これがそうなの?」

「たぶん学校だと、フロウ語で読んだのでしょう。これは原文のヒナンガバ語で書いてあるの」

 このブルベリ国の公用語は、フロウ語だ。

「ヒナンガバ語が読めるの?」

「そうよ。と言うか、私は大体の有名な言語なら、読めるわよ」

 メロンは、はひ、とか良く分からない声を出して、背もたれに体を預けた。

 そのままの格好で、空を眺めている。私も空を見てみた。

 ランが男の子達と追いかけっこをしている声が聞こえる。

「ねえサザンカさん」

「何」

「人間の心って、どうすれば理解ができるのかな」

 彼の顔を見る。

 目を瞑って体を反らし、頭は地面を向いていた。

「人間の心を、理解したいの?」

 彼は体を元に戻して、私を真直ぐに見詰めた。

「そう、知りたい。誰がどう思っているか、あるいは、僕がどう思っているか」

 理解は出来た。彼が何を言いたいのか。ただ、一つ気になった。

「貴方がどう思っているか?」

「そう。僕が、あるいは自分が、自分自身が、どう思っているのか。それをね」

 彼は噴水を見る。

「心を分かったつもりでいる。相手も、自分もね。僕はどうしてもそんな人の事が理解できないんだ」

「何で、それを私に?」

「それは、僕も分からない。ただ一つ言えるのは、僕はサザンカさんの事をただの通行人のようには考えていない、だろう、という事だ」

「だろう、か。それは、不確定、それとも未確認?」

「両方だ。僕が、ただそういう風に勝手に解釈をしているだけかもしれない」

「馬鹿と天才、紙一重。恋と嫉妬も紙一重」

「そういう事だ。何も、僕には分からないんだ」

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