27:水鉄砲
昼食を食べ終わり、ラフレシアの広場で私たちは休んでいる。
白や青、黄、緑、赤などの原色に塗られたレンガが円形に並べられ、その中央には真白な噴水がある。噴水は刻々と姿を変え、見ている人を飽きさせる事は無い。
走り回る子供達、買い物袋を持ったまま立ち話をするお母さん達、学校帰りなのか制服姿のままのカップル。
そよ風が吹き、私の髪をさらさらと揺らす。
軽く髪を掻き揚げると、右の奥のベンチに座っている学生服の男の子と目が合った。一瞬だけだったが、目が合った。
私は視線を戻し、噴水を眺める。
水が放物線状にあらゆる方向に出ており、まるで林檎のように見えた。それもすぐに形を変え、鯨のように僅かな量の水を高く打ち上げる事を幾度も繰り返す。
「平和ねー」
左側から突然聞こえてくる言葉。
「ラン、今まで平和じゃあなかったの?」
私は聞いてみる。
「ううん、そんなことないよ。でもね、なんとなく、平和だと思ったの」
「なるほど」
何に納得したのかは、私にも分からなかった。
鳥の囀りが聞こえる。子供達のはしゃぐ声が聞こえる。お店の人と値段交渉をする声が威勢良く響き渡る。
確かに、平和だ。
だが、何をもって平和とするのかは、私には分からなかった。
絶対的な平和は存在するのだろうか。相対的なものしか存在できないのではないか。
所詮、生物の考える事は相対的なものでしかない、と私は思う。光有る所に影有り。
「きゃっ」
ランが急に立ち上がったかと思うと、悲鳴をあげた。顔は喜んでいるように見える。
「もう、何するのよ」
ランが見る先には、男の子が数人。おそらくランよりも4才ほど年下だろう。私よりも5才下になるのか。
男の子達は手に水鉄砲を持っていた。ランの服は、僅かに水で濡れている。だが、それ位で着難くなるような服ではなかった。
「待て、こらー」
その声が発せられると同時に、男の子達は公園内をばらばらに走り出した。始めからそうするつもりだったのだろう。計画的のようだ。
対するランは落ち着いたもので、リーダー格の男の子を追っている。
明らかにランの走るスピードはいつもより遅い。遊びに付き合っているのだろう。
シロツメさんとラベンダは広場に入るとすぐにどこかに行ってしまったし、菫さんや大犬さんは本職の旅商人として大通りで商店を開いている。昨日開かなかったのは、昼間の方が何かと便利だからだそうだ。
ランと二人でベンチに座っていたが、一人になっても何も起きないのは当たり前の事だ。
そう思っていた矢先、私に声を掛けてくる人がいた。




