19:伝承
二百年前、つまりスパチュラ暦3250年、カラー国――エジプトに相当――で人間と魔物との間に戦争が起こった。
そもそもの発端は、レイアという魔法使いの少女から始まる。
レイアはひょこりと現れたかと思うと、突然山を一つ壊した。
壊したというと聞こえはいいが、結局の所は蒸発させたと言ってもいい。
そして、その少女はすぐにいなくなってしまったそうだ。これがきっかけ。
その山は、カエデ山と呼ばれ、魔物の一種のコユピンが沢山住んでいた。名前から想像できるだろうが、かなり温厚な性格の魔物だ。近くのカラー国と交易をしていた時期もあった。
だがあの少女のせいでコユピンは怒りを覚え、人間に報復をし始めたそうだ。
勿論、とばっちりを受けた人間は交渉を試みたが上手くいかず、自分達を守るために反撃をしなければならなかった。
とまあ、これが事実ではあるのだが、実際の所、現在に伝わっている伝承は、シロツメさんに言わせるとこうなる。
「二百年程前にレイアという少女が、突然この世界に来たんだ。彼女は自分を術使いと自称して、カラー国に取り入った。何でそんな事をしたのかも、どういう風に取り入ったのかも、今となっては伝わってはいないが、どうやら当時のカラー国王は魔物が大の嫌いだったらしい。そこで国王は彼女に頼んで近くに住んでいたコユピンを、その住家のカエデ山ごと消し去ったんだよ。それに激怒した魔物たちは人間を攻撃し始めたんだ。国王は彼女にもう一度魔物を攻撃させようとしたらしいが、彼女はいなくなってしまった。そのため、国王は軍を動かして魔物に対抗したんだ。それがきっかけとなってカラー戦争は始まったんだよ」
事実とは違う歴史が伝わる事は、よくある事なのだ。




