15:魔法使い
どれ位時間が経ったのだろうか。
目を開けると、目の前には見たこともない服を着た女性が、私を横向きに抱っこしていた。
「だいじょうぶ?」
にっこり微笑んで私の顔を見ながら、彼女は聞いてきた。
ぎこちなく頷くと、彼女はホッと息を吐いた。
「ビックリしちゃったのよ。まさかこの世界に魔法使いがいるなんて、知らなかったから」
「ま、ほ、う?」
「そう、魔法。あなたって、空を飛べるのネ。久し振りだな、あいつ以外で魔法を使える人を見たのは。もう半年くらいあいつを追っていたからネ」
そういうと、彼女は私を地面の上に立たせてくれた。
少しふらつきながらも、しっかりと立つことができた。
「あ、自己紹介をしていなかったわネ。私はレイアよ。よろしくネ。あなたは?」
「私は、えっと、ランです」
そこでレイアといった女性の顔を見た。
私よりは年上だろうか。肩まで伸びた金色の髪の毛、大きな黒色の目。そして白い半袖シャツに茶色の膝丈のスカート。白い紐靴を履いている。
「ラン、か。花の名前だったかな。蘭。綺麗な花の名前だけあって、ランちゃんも可愛いネ」
じっと私を見てきた。恥ずかしくて、顔を伏せてしまう。
「あ、そうだ、ランちゃんの魔法って」
そういえば、魔法って聞くと軽い胸騒ぎがしている。
「あの、魔法、って言うの、止めてもらえませんか?」
レイアさんはポカンとした顔をしたが、すぐにもとの笑顔に戻った。
「分かった。それじゃあ、ランちゃんの術って、どんなのなのなの?」
私の術について、ざっと説明した。その後、レイアさんも彼女自身の術について説明してくれた。
この人の魔法なら、何とか考えても大丈夫そうだった。口には出したくもないが。
火(fire)、水(water)、風(wind)、雷(thunder)、氷(ice)、地(rock)、光(light)、闇(dark)。これら八個を総称して基本魔法。
防(shield)、治(heal)、封(seal)、反(reflect)、移(move)、召(summons)、加(add)、想(feel)。これら八個を総称して補助魔法。
魔(enchant)、時(time)、飛(leap)、無(annul)。これら四個を総称して応用魔法。
オダマキ語のような呼名、ナデシ語のような表記、そしてエーデル語――ドイツ語――のような唱詠だった。
こことは別の世界ではこれら二十個の要素により魔法が成り立っているそうだ。
ここで、反(reflect)、召(summons)、加(add)、想(feel)、時(time)、飛(leap)、無(annul)の七個を除いた十三個が、彼女の普通の魔方陣に使われるものであるそうだ。つまり十三芒星ということ。
もちろん彼女は二十の要素全てを使えるらしい。
そして、私の目の前が明るくなったのは、レイアさんが飛(leap)をして平行世界から私の目の前に移動してきてしまったためだそうだ。誰かが空を飛んでいるとは思わなかったようだ。
「ところで、ランちゃんは空を飛んで、何していたの?」
「あっ」
すっかり忘れていた。
「川の水が溢れていて、この町の人が避難をして、私達がこの町に来て、私は洪水をなんとかしようと」
「やっぱりネ。だけど大丈夫。私がなんとかしておいたからネ」
ほっと肩を下ろす。
「それで、レイアさん、ここはどこですか?」
レイアさんは考え込んでしまった。
そしてしばらくして言った。
「分かんないネ」




