プロローグ1
ランは今日で十四になる。もう立派な成人だ。
だが、そんな日であるにも関わらず誰も祝ってくれなかった。それを喜んでやりそうな友達くらい何人もいるのに。
その理由は、誕生日以上に大変な事件が起きてしまったからだ。
それは、このフロウ国の王子、ラベンダ・フロウ王子がこの町にやって来た事だ。噂には何日か前からなっていたが、本当に来るとはランは思ってもいなかった。他の女性達は違ったようだが。
仮にも一国の王子であるから、そう易々と外に出られるはずが無いのだ。が、今朝やって来たかと思うと、急に舞踏会をやると言いだしたらしい。
それを聞いた女性達は黙ってはいない。もしかしたら、あの王子のお近づきに、運が良ければ妻になれるかもしれないのだ。そのせいで、誕生日を祝う事は保留になってしまった。その後の予定もだ。
「何で今日なのよ」
ランはそう愚痴りながら、床の上にある熊のぬいぐるみを上げて、落とす。
「まあ、仕方ないわよ。サクラたちも、明日祝ってあげるって言ってたわよ」
そう言われても、ランはまたぬいぐるみを上げて落とした。
「それにさ、ナデシ国の諺に、人間万事塞翁が馬、っていうのがあるの」
「何それ。初めて聞くけど、どういう意味なの」
「悪いことが、逆に良い事の前ぶれなのかも、っていう意味よ」
「ふーん。そう」
ぬいぐるみは中に浮いた状態で止まっていた。
「ところでさ、サザンカは何でそんなに物知りなの」
「こっちだって聞きたい事はあるの。何でランはそんな術が使えるのよ」
ぬいぐるみが床に落ちた。
「分かんない。それに、これから答えを見つけに行くんでしょ」
「そうだったわね」
サザンカの納得していない様子を無視して、ランは聞き返す。
「そっちはどうなのよ」
「彼氏?」
「違ーう。博識」
実のところ、ランはサザンカに彼氏がいるか知りたがっていたのだ。が、この時はつい、忘れてしまった。
「私が物知りなのは、毎日一冊本を読むからですよ」




