31
おれは、は303号のレーダーを頼りに、キング・ホワイトスネイクのマーキングをサーチする。新宿駅西口にはニンゲンの目には見えない様々なマーキングが存在するが、その中でも王たる彼のマーキングは特に目立つ場所にあるはずだった。しかし、それがレーダーには感知されない。
「は303号、レーダーの感度が悪いのではないか?」
おれはつい、若い情報鳩に文句を付ける。
「いいえ」
情報鳩は、まったくあきれた、というような口ぶりで吐き捨てた。
「感度が悪いのは、あなたのその目です」
「どういう意味だ」
は303号は、無言でその翼を二時の方向へ向ける。そこには、なにやらニンゲンどもが集まってそれぞれの手に電子機器を掲げていた。不気味な光景だ。
「なんだ、あれは?」
ニンゲンどもの手にある電子機器は、みな一様に一カ所を指している。
「よく見てください。あれを」
「あれは……」
コンクリートの壁に、血文字。31。
「よく考えたものです。こんなふうにマーキングを血塗れにしたら、わたしの動物電気レーダーにひっかからないですからね。あの血文字、あれの下にあるのがキング・ホワイトスネイクの……」
「ああ……」
血文字の下、キング・ホワイトスネイクのマーキングは、おれのこの耄碌した目にもうっすらと感知されていた。しかし、もはやそんなことはどうでもいい。
31。
飛行高度を下げて近くを観察する。
壁の下に何匹か、西口のラリポッポの死体が転がっていた。鋭利な爪で引き裂かれたような、無惨なそれ。
「……奴の、牽制か」
「でしょうね」
我々は、固唾を飲んだ。