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実験1日目ー4-

 

 皆が泣いているなか私だけが異質だと、ありさは思った。


 悲しさも涙も何も込み上げて来なかった。ただただ、真っ直ぐ遺影の雪を見つめるしかなかった。


隣にいる麻美が、ハンカチで目を抑えながら不思議そうにありさを見た。

麻美には、今の私がどんなふうに見えているのだろうか?ありさは見てくる麻美に目配せしながら思った。親友が死んだのに泣いてもいない私を不思議に思っているに違いない。



「ありさちゃん。」

不意にかすれた声がありさを呼んだ。


ありさが声がした方を見ると、そこには、雪の両親が、目を兎の眼のように真っ赤に腫らして立っていた。

二人とも雪が死んだせいですっかり元気を無くしたようだと、ありさは思った。

昔、消防士で体格の良かったおじさんも私より、小さくなってしまったんじゃないか、というくらいありさには弱弱しく見えた。


無理もない、おじさんもおばさんも一人娘の雪を、目に入れても痛くないほど、可愛がっていたんだから。

「おじさん、おばさん・・・。」

ありさは席から立ち上がり、二人に静かに頭を下げ、2人がいる通路に出た。

麻美も二人に会釈をしているのが見えた。


「ありさちゃん・・・。今日は来てくれありがとう。」

目が真っ赤の雪の母親が、弱弱しい声で、ゆっくり頭を下げる。


「いえ、まさか雪がこんなことになってしまうなんて・・・。」

「崖から足を踏み外すなんて・・・。」

雪の母親はそこまで言うと言葉が詰まって、手にもっていた紫陽花色のハンカチで目を抑え、肩を震わした。父親の方も辛そうに眉をしかめながらそっと、妻を抱き寄せた。

雪の母親は夫の胸に顔を寄せ、なんで…。と繰り返し呟いていた。

ありさはそんな二人に何もかける言葉が見つからなかった。


 よく学校帰り、ありさは雪の家によって二人で放課後の時間を雪の家で過ごしていた。

 雪の部屋だったり、リビングだったり。

 結構な頻度で通っていたが、雪のご両親はそんなありさをイヤな顔一つせず、学校帰りでお腹をすかしていた食べ盛りのありさにケーキや晩御飯を出してくれて暖かく笑顔で迎えてくれた。


 その笑顔は、もう見る影もなく、二人の顔には悲しみの色しか見えなかった。


可哀想な雪、学校の裏の崖から、足を滑らして谷底に落ちるなんて。そんな所で何をしていたの?


雪の母親は、少し泣いたあと、またゆっくりした動作でありさの方に顔を向けた。


「雪はもういないけど、ありさちゃんまたよかったらいつでも遊びにきてちょうだいね。」

雪の母親は顔をあげ、無理矢理微笑ながらありさに言った。


「もちろんです。雪の大好きだったチーズケーキ持って、またお邪魔しますね。」ありさもあわせるように少しだけ微笑んだ。


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