表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
この作品には 〔ボーイズラブ要素〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

淡雨

awaame

作者: ヨビネ

雨は降り続いている。きのうの夕方からずっとだ。

窓の表面はすっかり水の膜に覆われていて、まるで水槽を覗いているようだ。時折流れる小さな水流が、外の世界の表情をゆがめる。雨は霧だか水滴だか、そのくらいのあいまいな状態で空気中を踊っている。

早朝五時だから、雲がなければもう少し明るいはずだ。雨雲は文字通り天幕となっていて、朝の弱い日差しをさらに幽かなゆらめきにしていた。部屋は冷えた空気が滞留している。

衣擦れの音が鳴った。ブランケットに包まった彼は目をしっかりと開けて男を見ていた。男は「寝ていればいいよ」と言った。

「悪夢だ」

彼がつぶやいた。

「どんな」と男が聞くと、彼はすぐに「忘れた」と言った。

誰が見ても不機嫌だとわかる表情で彼は続けた。

「忘れたっていうか、何もなかったっていうか、そんな感じ」

「虚無とか、混沌とかか」

「大それた言い方だなぁ、もっと身近なの」

彼は起き上がって窓の外を見た。

彼も外の雨粒が見えたのだろう。

「道理で寒い」と言った。

「身近なものがなくなってるっていうか。寂しい感じだった」

寂しいという言葉が男は気になったけれど、彼はすぐに横になったから、それを問い詰めるのはやめた。彼の髪に触れながら「身近なもの」と言った。彼は髪を撫でる男の手に触れた。

「これも、」

彼の声はほとんど息だけだった。

「そうなったらどうするの」

男が尋ねた。すぐさま彼は「おまえがか」と言った。

「どうするって、どうもしない」

「そうなんだ」

「おまえもじゃないの。何もしないだろ」

彼はそれだけ言って目を閉じた。男は「何もか」と呟いた。

そうかもしれない、と感じていた。ある日の彼の涙を思い出していた。いつか、息がとまるほどの雨が降った日、その涙を流すことも、目を閉じて眠ることも、その息をすることも。

きっと男は、きっと彼は、何もしない。

タイトルをお渡ししたのを絵にしてくださって、それを文字にしました

ら、

なんとまんが化してくださいました !?

ゆだめさんのgalleriaへ

http://galleria.emotionflow.com/13671/336060.html

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ