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八話「モテない男たち」

 自室の扉を開けたところで、廊下で侍女さんをナンパしてる空森と葛城に遭遇した。侍女さんが困っていたので、一旦に本を置いてからそろりそろりと背後から近づき、二人の頭にチョップをかました。


「すいません、バカ二人が……」


 僕はペコペコと頭を下げながら二人の襟元をつかんでずりずりと引きずって行く。二人はぎゃーぎゃー騒いでいたけど、「じゃぁ青宮に殴られるか」と言ったら大人しくなった。あいつガチで切れると本当に怖いもんなー。僕も一度切れた青宮を見たことがあるけど、美女の睨み同様イケメンの切れっぷりは凄まじかった。おお、思いだすだけで寒気が……。


「侍女さんの仕事の邪魔すんなよ。ついでに僕の読書の邪魔も。折角本読もうと思ったのに」

「木崎は本ばっか読んでるからたまには外でろよ。俺たちみたいに……な」


 空森がキリッと目元を引き締め、無駄に白い歯を見せていい顔で笑う。しかし、イケメンの特徴の一つ、白い歯を持っていても所詮は平凡顔。青宮が同じことしたら女の人たちに騒がれるかもしれないけどな。


「いい顔で言ってもやってることはただのナンパだからな」

「うるせー。モテないことを嘆いてるだけのお前とは違うんだよ。俺はこのチャラさを生かして彼女をいずれゲットするぜ」

「でもお前女の子たちにアッシー君として使われてたじゃん」


 同士、葛城の言葉に空森が菩薩のような笑みを見せる。


「何を言うか同士葛城よ。女の子の役に立てるんだぞ? キャー空森君や、さ、し、い。アタシの彼氏になって。男として女の子に優しくするのは当然だよ……それより俺なんかでいいの? 彼氏。当然よ、空森君みたいに優しい人、ほかにいないもの!」


 空森は裏声をだして体をくねくねさせ、女の子役と男(自分)役を演じている。そんな空森を見て、同士葛城は死んだ魚のような目をしている。何と言うか……呆れてものも言えないってこう言うことを言うんだろうか。空森の涙ぐましい努力(ナンパとアッシー君)はまぁともかく、ここまできたら重病だよな……。もしかして僕もモテ()、青宮に同じように見られてるのか? 違うぞ、青宮。僕は確かに白い歯を輝かせてキザなセリフで女の子にキャーキャー騒がれるイケメンが憎いけど、ここまで重病ではないぞ!


 とりあえず廊下でこんなアホなことやっててリッツに見つかりでもしたら絶対からかわれるので、葛城と協力して体をくねくねさせながら演技をしている空森を部屋まで引きずって行った。


「バカだバカだと思ってたけどここまでバカだったとは……」

「うん、木崎や青宮が俺と空森をどう見てたかわかった気がする」


 は、ははは、と死んだ顔で笑う葛城。安心しろ葛城、お前が小心者でナンパするときも空森にくっついているだけってのは僕と青宮は知ってるから。


「はぁー、モテてぇな。折角異世界きたんだからハーレムとか築けねぇのかよ、クソッ」


 ようやく空森が正気を取り戻したようだ。


 スマン、空森よ。お前の念願のハーレムフラグをへし折ってるのはこの僕だ……。青宮にはまおたびの世界がどれだけ素晴らしいか語って聞かせたから、多分僕がフラグをへし折ってることはわかっているんだろう、多分。わかってて言わないのは、ハーレムの先に待っているのが魔王との戦いだから。


 リッツはいいヤツだ。だけど、蒼魔女が僕に毒を盛ったように、ほかの魔王たちがリッツのようにいいヤツとは限らないのである。もしかしたら、戦闘狂のちょっと頭のネジが外れたヤツかもしれない。そんなヤツと対戦するのはご免。なので、容赦なくフラグはへし折らせてもらう。


「お前ら……どこにいたのかと思ったら空森の部屋に集まってたのか」


 ゲッソリ顔の青宮が部屋に入ってくる。もみくちゃにされたっぽい服や髪の乱れを見て、ああまたかと思った。青宮は外を出歩くとよく女の人に囲まれる。そして、べたべた触られるのだ。相手が女と言うこともあって、青宮は為すがまま。なので外を出歩くと毎回服や髪がぐしゃぐしゃになる。


「人魚さんに囲まれてたら、リッツが助けてくれた」

「お疲れさん。モテ()はモテ()でつらいな」


 僕は青宮の肩を慰めるように叩いた。


「くっそー……青宮このモテ()めぇー! せめて人魚さんが触ったところを触らせろぉ」

「ぎゃー! やめろバカ森!」

「人魚さんの残り香ー!」


 バタバタ部屋で騒いでいたらシェラを連れたリッツが飛び込んできて、そこに広がっていた光景は空森に押し倒され服がはだけた青宮の姿。押し倒した張本人は青宮の服をくんくん嗅いでいて、僕と葛城が空森を必死で引きはがそうとする……そんな光景だった。


 当然のようにリッツは「空森は同性愛者だったのか」と納得して慌てて空森が弁解をして、夕食時に散々空森はリッツにからかわれていた。

 

 

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