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七話「幻獣魔王と呼ばれる者」

 あれから、数週間が経った。僕がいつものように書庫から本を拝借して自室として与えられている部屋に戻る途中、こちらに向かって歩いてくるイケメンを発見する。よく見ると、それはシェラを連れたリッツだった。イケメンは遠目からでも目立つなぁ……。


「よ、キザキ。また本読んでるのかー? ホントインドア派だよな、お前」

「ほっとけ。空森と葛城みたいに異世界来てまで女探しする気はないから」

「あいつらすげーよな。初めて見る人魚に「美しい! どうか俺と付き合ってくださぼへぇっ」って人魚に交際申し込んでアオミヤに殴られてたもんな。おっもしれー」


 腹を抱えて大笑いするリッツを見て、シェラが驚いたように目を見張って、それから子供を見守る母親のように穏やかな笑みを浮かべた。

 

 リッツは、ユニコーンと言う幻獣だ。今は人間に変化してるけど。幻獣たちは、狩人と呼ばれる人間たちに狩られて数が少なくなっているらしい。幻獣の体は薬にも毒にもなるから、それを利用しようとする人間が後を絶たないんだと。

 そこでリッツは、自身が魔王として君臨することで人間を威嚇し、幻獣たちに手を出すなと幻獣たちを守っているのだ。なのに、人間は幻獣たちを必死で守ろうとするリッツを退治しようと勇者(僕たち)なんてものを異世界から呼んだ。


 リッツは、幼いころから狩人に狙われ続けたから。狩人に狙われ怯える幻獣たちの気持ちが理解できる。だからこそ、守ろうとする。

 この国にいる幻獣たちは、リッツこそが本物の王だと称えている。魔王として人々を恐れさせ、幻獣たちに狩人を近づけさせない。何と泣ける話だろうか。リッツは幼いころ、母親を狩人の手によって亡くしている。リッツの城に集まる幻獣たちもほとんどが、親を亡くした子供である。そう言った子供を増やさないためにも、俺は魔王で居続ける……リッツはそう、語っていた。普段から気を張っているリッツが大笑いするところは、珍しいようだ。


 まさか敵対するはずの魔王がこんなにいいヤツだったなんて、知らなかったので僕たちはひどく驚いた。けれど、すぐに打ち解けた。僕たちは身分は違えどいい友人(・・)になれたのだ。


 まおたびの幻獣魔王はもっと、嫌なヤツだった。女を侍らせ正妻のほかに愛人をたくさん作って……顔がカッコいいのは小説と同じだけど、小説と違うのは実際に会ったリッツは中身もカッコいいってことだ。


「アオミヤも結構容赦なく殴るよな、ソラモリとカツラギを」

「あれでも手加減してるほうだよ。青宮が本気で怒ったらガチで怖いから」

「そうなのか? それより、キザキは何の本を読んでるんだ?」


 リッツが、ヒョイと僕が手に持っている本を覗き込む。本を見て、不思議そうに首を傾げた。


「何でまた、歴史書なんか?」

「異世界の歴史とか、面白そうかなぁって」

「ふぅん。女の尻追っかけてるソラモリとカツラギとは大違いだなぁ。アオミヤは何してる?」

「散歩に行ったから、女の人に囲まれてるんじゃないかなぁ」


 青宮は、どこを歩いても必ず女の人に声をかけられる。「デート行きませんか」とか「ちょっと遊びませんか」とか。その度に僕らモテない三人組は嫉妬に燃えたものだ。

 リッツに紹介された人魚(足があった)たちも、青宮に釘づけだったし。多分、外で囲まれてるんだろうなぁ。あの人魚たち美人だったな。声も透き通るように綺麗な声だったし。足が生えたら魔女に声取られるって話、どこ行ったんだ?


「そっか、んじゃまぁ、読書に勤しんでくれ」

「ああ、外で青宮が困ってたら助けてやって」

「おうよ」


 ヒラヒラと片手を振りながら、リッツが去って行く。


 さて、と。僕は自室にこもって本を読み漁るとするか。ホクホクしながら、僕は歴史書を持って自室へ戻った。

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