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四話「いざ行かん」

 植え込みの上に落ちて、五体満足か確認する。手をグッパーしてみたり、足を動かしてみたりして、どこにも異常がないことを確認。

 よしよし、うまく行った。二階程度なら上手く受け身をとれば助かるって言うけど、生憎と僕たちの中に武道を習っている者はいない。なので、植え込み頼りになる。


「マジかよ……本当に飛び――った。はぁー……仕――ぇ、俺たち――くぞ」

「マジもご――」

「空森――かい声だ――って」


 二階でひそひそ話をしているので、中々聞きとりづらい。青宮は度胸があるので多分飛び降りてくるだろう、問題は女好きのくせに根は小心者な葛城。それと、レティさんに心を奪われている空森の二人だけど……あの二人なら青宮が引きずって無理やり飛ばさせるだろうから、僕は王城の人がいないか辺りを見渡す。

 誰もいない。どうやら僕が落ちたところは、裏庭のようなところみたいだ。これは好都合。


 しばらく待っていると、空森、葛城、青宮の順で飛び降りてきた。空森も葛城も半ば青宮に押される形で渋々飛び降りた感じ。空森に至っては「もっとお姫様といたかった」とぶちぶち文句をたれていた。じゃぁ空森魔王と命がけの戦いやんのかよ、と聞けば唇を尖らせて黙る。お前は小学生かっての。


 とりあえず全員そろったところで、どこから逃げ出すかって話になる。王城の周りはぐるりと塀で囲まれている。

 塀の近くに寄ってぺたぺた触ってみる。ごつごつした石を積み上げて作ってあるようで、ところどころにくぼみがある。試しにそのくぼみに足と手を引っ掛けて上ってみると、意外とイケた。


「お前らもこい」

「飛び降りの次は塀上りかよ……」


 うんざりしたような空森の声。


「見つかる前に、早く」


 僕は三人を急かしてから、さっさと塀を上って外へ出る。塀の高さはそんなに高くないので、上ってしまえばあとは飛び降りるだけだ。着地した時ちょっと足がしびれたけど、まぁ多少の痛みは仕方ない。魔王と戦う時は、こんな多少(・・)の痛みなんかじゃ済まないだろうから。これぐらい、我慢だ。

 全員そろって、とりあえず王城からなるべく離れたいので城下街まで行くことにする。その前に、こっそり僕が寝かされていた部屋からかっぱらってきた布を小さく裂いて、頭からかぶるように言う。最初は不思議そうにしていた三人も、城下街へ出て気が付いたようだ。


 そう、ここフラワーウィドルには黒髪黒目の人間はいないのだ。大体が茶髪に茶色目。赤髪なんかもいる。そんな中で黒髪黒目が歩いていたら、一発で僕たちだとばれてしまう。なので、布を頭からかぶって髪と目を隠して歩く。


 こうすればフラグその三も回避できそうだな……。フラグその一が王城に召喚されて王女様に「魔王を倒してください」と頼まれること。その二が王城の地下にある力の泉と言うありがちな場所に入って女神様から力を得ること。これは無事回避できたので、その三の獣人の少女に「お母さんが魔族に捕まったから助けて」と言うお願いも回避できるだろう。なぜなら、力の泉に入っていないイコール僕たちは普通の人間だから。お願いされても何の力も持たない僕らでは無理だ、と断ることができる。


 ちなみに獣人の少女のお願いを聞いて魔族の元へ向かうと、あれよあれよと言う間に魔王と対峙することになる。それは避けたい。


 しかし、断るのも心苦しいのでできれば遭遇自体回避したところだ。僕は注意深く辺りを見渡して獣人の少女がいないか確認する。獣人の少女の見た目は、セミロングの茶髪に茶色目。頭には犬耳が生えていて、黄色のワンピースを着ている。


 今のところ、僕たちの周りにそんな少女は見当たらないので安心。


「木崎に言われるまま王城飛び出してきたけど、木崎は何考えんだよ?」

「……人の目がない路地裏で話すよ」


 路地裏に入りこんで、人の目がないことをよく確認する。年のため、頭からかぶっている布は取らないでおいた。


「で? 話せよ」

「あのまま王城にいたらあっと言う間に魔王との戦いに持ち込まれるからね。ちなみに、魔王はこの世界に四人いて、それぞれ東西南北に一人ずついるんだ。一人は東の蒼魔女。一人は南の幻獣魔王、一人は西の(くれない)の魔王、一人は北の影の魔王。こいつらを倒さないといけない状況に、持ち込まれる。それなら、王城を抜け出して自力で元の世界に帰る方法探したほうがいいと思ったんだ」


 僕の言葉に、全員が渋い顔で黙った。空森なんて「あのお姫様そんな無茶ぶり俺たちにしようって考えてたのか?」とショックを受けている模様。あれでもレティさんは第一王女だからね……使命を全うするのは当たり前のことだろう。


「だけど、俺たちを召喚したのはあの王城にいた魔術師ってやつだろう? そいつら以外に元に帰れる魔法使えるヤツがいるのか」

「それは……わからない。これから探して行こうと思ってる。まぁ、無理なら異世界で身を隠しながら暮らすしかないね」

「マジかよ……」


 葛城が絶望したような声をだした。その顔は、ひどく青ざめている。


「じゃぁ、魔王と命がけの戦いするか? それで命を落として、後悔しないと言いきれるか? 僕なら無理だ。だったら異世界で暮らすのを選ぶよ」


 僕の言葉に、三人が沈黙した。まぁ、無理ないよなぁ……。突然異世界に召喚されて、魔王倒してくれって頼まれて命がけの戦いするか異世界で暮らすかの二択しかないんだから。でも、色々魔法について調べれば、もしかしたら元の世界に帰ることだってありうるかもしれない。


「とりあえず僕は、魔法について調べるために図書館に行こうと思うんだけど、お前らついてくる?」

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