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十五話「魔力の違い」

 どんな流れでそうなったのかよく覚えていないけど、なぜか僕たちはシェラに魔力を測ってもらうことになった。


 そんなわけで、僕たちは学校の教室みたいな部屋に案内された。懐かしい、学校に置いてあるような机と椅子だ。この椅子、引きずると先生に叱られるんだよな。ふっとそんなことを思い出して、懐かしい気持ちになった。


「じゃぁ、お前たちの魔力を計る。この石像に手のひらを合わせろ」


 白い、図工室とかに置いてそうな上半身だけの石像を持ってくるシェラ。石像は片手だけ手のひらをこちらに向けている。なぜか口があーっと開かれている。何でだろう。


「はい、まずは俺から!」


 空森が、いい子ちゃんの代表みたいに挙手して石像に手のひらを合わせた。瞬間、石像の開かれた口から火がぼおっと吐き出された。驚いたように後ずさりする空森をよそに、シェラが口を開く。


「ソラモリは火属性だな。自らの体を魔法で強化するのに向いている。魔力は一般人レベル」


 どうやら、石像の口から吐き出されるものによって属性が決まるらしい。次は葛城。さっきの空森を見て、火が出てこないか恐る恐る手のひらを合わせる。瞬間、石像の口から弱い風が吐き出された。葛城は風属性みたいだ。火が出てこなかったことに安心している模様。ちなみに葛城も魔力は一般人レベルみたいだ。

 次は青宮。手のひらを合わせた。けど、石像の口からは何も吐き出されない。


「ナニナニ、故障?」

「違う、これは……」

「まさか青宮にだけ特別な力が……?」


 空森が、「俺の右腕がうずく!」とかふざけたことやって青宮に頭を思い切り叩かれてた。

 シェラが、難しい顔をする。考えるように頷いて、口を開く。


「アオミヤは、魔力が弱すぎてどこにも属せない」

「魔力が……弱い」


 シェラの言葉に、さっきまでの突っ込みの切れはどこへやら、ショックを受けたように青ざめる青宮。シェラが、慰めるように言った。


「魔力が弱い者でも、戦える者はいる。そう言うヤツらは、体術や剣術を磨いてる」

「青宮剣とか似合いそうだし、いいんじゃね?」

「てか、そもそも俺たち戦わないし」


 葛城の言葉に、それもそうかと皆で笑う。次は僕の番だ。ドキドキしながら手のひらを合わせると、途端に辺りが黒色のもやに包まれる。シェラが難しい顔をした。

 石像を見るけど、口からは何も吐き出されない。空森が騒いでないところを見ると、どうやらこの黒いもや、僕とシェラにしか見えてないようだ。


「何だ? これ……」

「何、また魔力が弱すぎてとか?」

「木崎だもんな、ありうる」

「お前ら……」


 難しい顔をしていたシェラが、重い口調で話す。


「逆。キザキは……魔力が強すぎる。魔法を覚えれば魔王クラス」


 意外な言葉に、全員かたまる。空森が、またもや挙手をしてシェラに質問する。


「じゃぁ、石像の口から何も吐き出されなかったのは何で?」

「それは……魔力が強すぎて、アオミヤとは逆の意味でどこにも属せないからだと思う」


 そう言うシェラの目は真剣そのものだった。だけど、僕は気づいていた。ここ数週間過ごすうちに、シェラが嘘をつくときは右手を覆うように左手で握ると言う癖があることを。この時もまた、シェラは右手を覆うように左手で握りしめていた。嘘をついていることがわかったけど、言いたくないのなら無理に言わせる必要はないかと思って、放っておいた。


「キザキが一番魔力高いとか! ありえねー」

「でも勇者に選ばれるくらいだしな……俺たち一般ピープルとは違うのかもな」

「おいおい、僕たちは戦わないんだぞ? 魔力が強かろうが弱かろうが関係ないじゃん」

「それもそうだな」


 そう納得して、部屋を出て行った。

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