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十話「歴史書の内容は突っ込みどころ満載」

 誰かに背中を蹴飛ばされた衝撃で目が覚めたと思ったら、床が目の前。見事に顔面から床に着地した僕は、「チュンチュン」と言う鳥のさえずりを聞きながらしばらく床をゴロゴロ転がって痛みに悶えていた。涙目でようやく落ち着いて僕を蹴り落としたヤツはどいつかと見てみると、空森だった。くそう、この野郎……。


 僕は行ったん自室に戻り、持ってきたペンで空森の顔に一心不乱に落書きをした。「アホ」「間抜け」「寝相悪い」などなど。黒色のペンだからあんまり可愛くないけど、花も描いた。流石に定番の額に「肉」はやめておいた。このペンは一応、水性だから洗えば消えるはず。……油性だったらマジでごめん、空森。


 うう、体がバキバキだ。どうやら僕たちは枕投げに熱中したあと、気絶するように寝てしまったようだ。流石に広いベッドとは言え男五人が寝るにはきつかったようだ。


 ぐるりと部屋の中を見渡して、違和感に気づく。


「ん?」


 そう言えば、途中参戦したリッツの姿がベッドの上にない。広いベッドに死んだように眠っているのは、青宮、葛城、空森の三人だ。空森に蹴落とされなければ、僕も寝てたはずなんだけどな。改めて空森に怒りがわくが、すぐにどうでもよくなった。仕返し(落書き)はしたし、自室に戻って本でも読むかな。リッツは仮にも魔王だし、多分仕事か何かの関係で朝が早いんだろう。


 ただいまの時刻は、恐らく朝の六時から七時ごろと見た。ここ、フぇモリスには時計と言うものが存在しない。太陽の高さで大体の時間を見ている。最初は戸惑っていた僕たちも、段々慣れてきた。何より、現代人のように時間に縛られないのが自由で南の国らしくていいと思う。


 僕は部屋の扉をそっと閉めて、部屋を出た。長い廊下を歩いて自室につく。自室に入ってベッドに腰かけ、この城の書庫から拝借した「この世界の歴史」と言う歴史書を開く。


 その昔、神と呼ばれる者がいた。その名を、イザナと言った。イザナは「人間観察キット」と言うものを神界で買ってきて、まずは一つの大きな大陸を作りだした。


 この時点ですでに突っ込みどころ満載である。何だ、人間観察キットって。神界で買えるのか、そんなもん。そしてお手軽な感じで一つの世界作りだしちゃってるけどいいのか、イザナさん。

 とりあえず続きを読もう。僕はページをめくる。


 イザナは大陸に名前をつけた。その名もフラリスウェテイル。ここから少しずつ文字をとって、今の四つの大国にそれぞれ名前がつけられた。東にフラを取ってフラワーウィドル。南にリスを取ってフぇモリス。西にテイルを取ってグロテイル。北にウェを取ってウェザーと名付けた。ちなみに元々一つの大陸だったフラリスウェテイルが四つに分かれたのは、イザナが誤って大陸に小石を落としてしまったためであり、この小石は大陸に隕石となって降り注ぎ大陸は四つに分かれてしまった。


 ……うん、もう突っ込むのはやめよう。でも一つだけ言わせてほしい。イザナさん、マジドジっ子。

 西と北の大陸の名前は初めて見たな。西がグロテイル、北がウェザーか。よし、覚えておこう。いつか行くかもしれないし。しかしフラワーウィドルと違って北の大国は随分と短い名前なんだな。


 コンコン、と扉が叩かれる。突っ込みどころ満載の歴史書から視線を扉に向けて返事をすると、「朝食の準備が整いましたのでお越しください」とのことだった。もうそんな時間か。

 僕は歴史書にしおりを挟んで、部屋を出てリッツの待つ食堂(?)に向かう。


「おはよう、リッツ」

「おはようキザキ。それからアオミヤ、カツラギも。ソラモリは?」

「木崎が描いた落書きを消すのに必死」

「子供っぽいことするなぁ」

「僕をベッドから蹴落とした空森が悪い」


 リッツが肩を揺らして笑う。傍には、当然シェラがついている。シェラはリッツの秘書兼護衛のような仕事をしているらしい。シェラは剣術を得意とするようで、常に腰に剣を下げている。


「木崎ぃ! お前よくも俺の顔に落書きなんぞ……」

「ぶはっソラモリ、まだ花がうっすら残ってるぞ」

「大体僕をベッドから蹴落として床に顔面着地させた空森が悪いんだろうが!」

「やんのかコラァ」

「主殿の前でやめんか!」


 ついにシェラが止めに入って、空森が顔に花の落書きをうっすら残した状態で朝食がスタートする。


 ここは何と言うか……食堂と言うにはあまりにも豪華すぎる部屋だ。リッツに聞いていたら、ほかの国の魔王たちと食事会を開く際に使う場所のようで、そんなところに僕たちみたいな庶民が入っていいのかと聞いたら「友人だからいい」と言葉が返ってきたのでこうしてこの豪華すぎる部屋で食事をとらせてもらている。


「そう言えばリッツに言いたいことあったんだけど」

「何だ?」


 僕たちは目配せしてうんうんと頷き合うと、リッツに向きなおってハッキリと言った。


「この城で、働かせてほしい」

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