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プロローグ

「ここが、北の国……」


 転移魔法で南の国から北の国まで飛ぶ。正確に言えば、転移魔法を使ったのは東の国で知り合った魔術師のシェラ。彼女は非常に優れた魔術師で、遠く離れた場所でも一度足を踏み入れた場所なら転移魔法で一瞬でついてしまう。


「ありがとう、シェラ」

「礼には及ばない。お前たちのような人間がまだいて、よかったと私は思う」


 彼女の(あるじ)は南の国に君臨する魔王、幻獣魔王だ。その名の通り幻獣を統べる王なのだけど……。僕たちの正体を知った上で、匿ってくれた。ずっと僕たちを城に置いてもいいと言っていたけど、流石に迷惑がかかるのでやめて大人しく旅を続けることにした。


「何かあったらまた、連絡をとってくれ」

「ああ」


 そう言って、シェラは転移魔法で自国へ帰って行った。ほんの一瞬で姿が見えなくなる。改めて、魔法とはすごいものだと思った。そう言えばシェラに僕らそれぞれの魔力を見て貰ったとき、「お前が一番強い。魔法を使えるようになれば魔王クラス」って言われたっけ。別に魔王になる気はないからいいけど。


 そうそう、シェラに連絡手段として渡されてたんだっけ。僕は水晶玉を取り出す。これは魔法でできていて、遠く離れた相手とも連絡が取れるアイテムだ。とっても便利。

 僕らはシェラが自国へ帰るのを見送ってから、眼下に広がる北の国を見つめる。


 さて、と。まずは宿探しからかな。いい宿が見つかるといいけど……。流石は北の国と言うか、非常に寒い。早く宿を見つけてぬくぬくせねば。


「北って何だっけ、魔王様」

「影の魔王だろ」

「すんげー美女だったら俺どうしよう」

「お前はとりあえず黙っとけ」


 ぎゃーぎゃーと騒ぎながら、僕らは旅を続ける。

 





 



 そのころ、東の大国のフラワーウィドル第一王女レティは荒れていた。


「目撃情報が途切れた? どうするのよ! ああもう、何であんな人たちを勇者として呼んでしまったのかしら……。まさか魔王退治の使命を放り出して旅に出るなんて。国中探しても見つからないってことは、まさか魔術師の手を借りて国外に? もぉー……どうしたらいいのよぉ」


 その場にレティは泣き崩れた。慌てて控えていた侍女たちが駆け寄って、なんとかベッドまで運ぶ。レティはベッドに突っ伏したまま、侍女たちに部屋を出るように命じた。侍女たちは頭を下げ、部屋を出て行った。扉のしまる音を確認してから、レティは小さく呟いた。


「誰だって魔王となんて戦いたくないわよね……わかってる、わかってるけど……」


 それでも、彼らは最後の希望だったのに。


 魔王と命がけの戦いなんてご免だ、と言う彼らの気持ちも理解できる。しかも、魔王がいて困るのは私たちであって彼らじゃない。見ず知らずの人に命がけで魔王と戦ってくれと頼まれてほいほい受けるほうがどうかしてる……。


「はぁー……」


 レティは、重いため息をついた。

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