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MOB男な灰魔術師と雷の美姫  作者: 豆腐小僧
第一章 MOB男な新生児は他業無得の零才子
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007 0歳児からの魔法講座……番組の途中ですが誘拐されました。

 ども、エドゥアルド・ビスマルク改め

 エドゥアルド・ウォルコットです。


 現在、ボクちゃんはサウスギルベナという地方都市の助産施設にいます。

 なんでも、大地母神を崇める教団が運営している施設で、そこそこ金持ちしか入れない施設なんだとか。


 自分の親がどういう立場なのかがいまだに掴めてないです。

 師匠から名前が変わったことを教えてもらったが、師匠も俺の体を軸にしてしか見ることができないので、詳しいことがわからないそうだ。

 

 でも、なんか複雑そうで不安。

 頼むから幼児虐待とかは勘弁して欲しい。こんな人権意識の低そうな封建世界の幼児虐待とかってとんでもないことされそうだし。


 体のほうだけど、相変わらず目が見えません。でも他の機能は大分敏感になってます。

 とはいえ、耳は聞こえても何を言っているか分かりませんがね。

 目が見えないせいで、他の器官が発達してるのかね。

 目が見えないのがスゲー不安なんですけどー

 師匠がお医者様の話を盗み聞きしたところ、どこにも異常はないそうなのです。

 成長に伴って、視力も発達していくのかなぁ。

 前世の記憶も役に立たない。赤ん坊の頃のことなんか覚えてないし。


 赤ん坊らしく一日の大半は寝てるけど

 夢の中で修行中です。

 習っているのは、国語と算数、それに灰魔術。あと戦闘術。

 夢の中でどうやって戦闘訓練をしているかというと、師匠の呼び出した魔獣や幻影兵士を相手にしてます。いや、してました。

 夢の中なんであくまでイメージトレーニングなんだけど、師匠いわく

「夢とは言っても、現実世界にも影響はあるので、真剣に」

 とのこと。つまりあれだ、催眠術をかけられた人間が熱した火箸だと言われて、ただの割り箸を押し付けられたら本当に火傷したみたいな話だな。

 で、一度修行してみたんだが、本当に現実の俺の体も怪我をして、現実社会の方で大騒ぎになったらしい。そりゃそうだわな、赤ん坊がいきなり血を噴出したりしたら、どんなホラー映画だっつー話だ。そんなわけで今のところ勉強の方を重点的にやっている。

 で、算数なんだが、一応大学に受かるくらいの学力があってなんで、この世界で算数をならっているかというと、この世界独自の計算方法や貨幣なんかについて教えてもらったのだ。でもこちらも一日ほどで終わった。貨幣価値なんかはすぐに思えられるし、やっぱり計算自体も現代日本の方が進んでいる。


 この国の歴史なんかは、雑談している時に、教えて貰っている程度だ。師匠はなんと言っても300年前の人間だし、歴史なんかは成長した後自分で必要なことを調べればいいとのこと。


 というわけで、習っているのは国語と灰魔術が中心だ。


 言語はまぁ、英語を習うのと大差ないな。

 師匠が日本出身と言うことのメリットは大きい。

 外国語として、この世界の言葉を学んだ師匠は文法知識もあったからだ。だから「なんでそうなるのか」ということを理論的に説明してくれる。しかも日本語とこの世界の言葉の意味、両方を知っている。


 ああ、そう言えば転移者である師匠は、言葉の習得は必要なかったらしい

 なんでも、この世界に召喚された時に、黒魔術を使ってこの世界の言葉が分かるようにしてもらったそうなのだ。ふむ、いわゆる「翻訳コン○ャク」の魔法というわけか。

 そんな師匠が、この世界の言葉を習得したのは、灰魔術を開発するためだったらしい。術の開発のために、文法構造からこの国の言葉を学んだらしい。さすが元平安官僚。高スペックだな。


「君の場合は、転生者の赤子なんだから、成長と共に自然と喋れるようになるとは思うけどね」

 と、言われたが、術の開発なんかには言語構造を理解しておく必要があるらしいので習うことにした。


 そして、灰魔術である。

 灰魔術、という名称は黒魔術師達が名づけた名称で、一般にはこのように言われているが、正式には『積道』という。

 人の情念や月日を重ねた木石。そういったものに宿る力を利用した魔術と言うことだ。


 この世界でメジャーな魔法は三種類。

 そして、全ての魔法に共通しているのは、『魔力』を利用していること。

 『魔力』と一言で言っても、実際はさらに、『魔力』『魔素』『魔粒子』といった物質?、エネルギー? に分かれているそうである。

 

 この3つの力にどういう違いがあるのかは、かなり学術的で小難しい説明があったが、それを要約してみると、


 『魔力』は無から有を作り出す力だと説明された。だが、俺が話を聞いた限りでは、それはそう見えるだけの話で、実際には『魔力』というものがその『有』の元になっているんだと思う。万能細胞みたいなものか。実際に魔力に『無』から『有』を生み出す力があり、『光あれ』的なものであったなら、それは人間に制御できる力ではないだろう。つまり『魔力』はこの世の理、物理法則なんかをねじ曲げる力と言ったほうが正しい。


『魔粒子』。これはどうやら魔力によって物理法則が曲げられたことによる歪みであったり、誰かが強く願ったことによる歪み、いわゆる『阿呆の一念……』とやらで起こった歪んだ力のことらしい。付喪神とか呪いのようなものなのだろう。魔粒子は色付けされた力であり、その色付けされた色の力を持つ。魔力のように汎用性がなくなる代わりに、限定条件下では強い力を発揮する。


 そして『魔素』。これは物質本来が持っている力だということだ。なんだかよくわからないのだが、火が燃えるのも火を燃やすための力、水が流れるのも水を流す力が働いていて、その本来あるべき力が『魔素』ということなのだそうだ。


 この世界には魔という因子が存在するのだがその循環関係から見たほうが理解しやすいかもしれない。


 まず『魔力』が生まれる。この力は困ったことに他の因子を歪める力を持っている。誰かが意図的に魔力を使って理を歪める。その歪められた『魔力』は『魔粒子』という色のついた力になる。でその『魔粒子』はふたたび誰かの手を離れて沈殿しているうちにその色を失い、『魔素』というあるべき自然に戻る。で、その『魔素』は『魔力』に変えられる誰かによって、『魔力』となって何かを歪める。


 かなり端折っているので正確ではないが、感じはそんなものだ。細かくやりだすとそれだけで魔導書の一冊や二冊は書けちゃう。そしてこの魔のメカニズムを正確に証明できればノーベル賞ものだろう。この世界でなんという賞があるのかはしらんが。


 黒魔術は『魔力』を変換して魔法効果を体現する。

 攻撃力が最も高いのがこの黒魔術だ。

 黒魔法は光りの陣営以外に属する神の力を利用する魔法で、その中でも特に邪悪な存在を利用する場合は闇魔法と呼ばれるらしい。

 

 黒魔術師達が白魔術、白魔法と呼ぶのがRPGなんかでは神聖魔法とか呼ばれていた奴だ。

 白魔術は『魔素』を触媒として薬の効果を上昇させることなんかが得意らしい。

 『魔素』『魔力』を利用して欠損した体を再生するなんてこともできるらしいが、そこまで高度な白魔術を使える人はほとんど存在しない。

 白魔法は、光りの陣営に属する神の力を利用する魔法だそうで、俺が今お世話になっている助産施設を経営している大地母神教団の使う魔法もこの白魔法になるんだって。





「灰魔術、積道はその中間に位置するような術です」

 セドリック師匠が扇で口元を隠しながら講義をしてくれる。俺は四六時中寝ているので睡眠学習の時間は事欠かない。

「得意なのは、補助系魔術です。物理的な打撃能力では黒魔術の方が得意ですし、精神、霊体への攻撃力では白魔術の方が強いですね」

 なんか、そう聞くと灰魔術って中途半端な感じがしますね。

「そうですね」

 師匠が頷く。開祖がそんなこっていいのかいな。

「ただし、黒魔術は術者本人が大量の魔力を必要とするので、普通そう何度も使えるものではありません。それは白魔術の治癒も同じです。その点、積道は『魔力』を触媒とし、『念』を利用するので術者本人の魔力はほとんど必要としません。それに、これら三つの魔術系統は得意なことが違うだけで、黒魔術にできることは、灰でも、白でも似たようなことはできるのですよ」

 え? そうなの? それに『念』? また新しい言葉がでてきましたね。

「例えば、白魔術の治癒ですが、黒魔術でもできないことはありません。ただし、白魔術より高度な術であったり、治癒というより改造に近くなってしまったり、灰魔術でも、薬草学の分野はありますし、高度な魔法を使えば可能です。

 『念』というのは黒魔術師達の言うところの『魔粒子』のことですよ。積もり積もった人の想いや、自然界の物質が長い年月を経て得た力のことです。そういう意味で黒魔術師たちが私達の積道のことを『灰』と名づけたのは言い当てて妙といえます。ただし、白と黒の中間と言う意味ではなく、燃え後に残る灰の方ですが」

 上手いこといいますねぇ。

「フフ」

 うーん、男の見ながら師匠の笑い声はそこはかとなく色気がありますな。そういう趣味はないけど。ぞくっとする時が。


 しかし、聞いた感じだと、それぞれの魔術で、随分利用するための技術が違うみたいだ。

「その通りです。ですからそれぞれの魔術を習得し、発現するには才が重要なのです」

 才?

「生物は魔素を取り込み、魔力に変換する機能を持っています。黒魔術は、その魔力を使って事象を具現化する力。白魔術は魔素を使って物質を純化させ、その効力を最大限引き上げる力。積道は『念』(魔粒子)を掴み、その色付けされた意味を利用する力。これらの力はもちろん努力次第で万人が習得できるものだと私は思っています。ただし、才のある人間とそうでない人間では同じ努力をしても習得の度合いはまったく違います。百年努力しても1歩しか進めない者もいれば、努力しなくとも自由に歩きまわれる者はいます」

 才能か……なんか凹む言葉だな。なんでだろ?

「何か嫌な思い出でも?」

 さ、さあ? なんとなくですぅ。

「そんなに不安になる必要はありませんよエド。あなたには積道の素質があります」

 その心は?

「最初に出会った時に貴方が卓を出して見せたのを覚えていますか?」

 ああ、あれか。あれは師匠の真似をしたのと、自分の夢だから卓袱台くらいだせるだろうって思ったんだけど。

「あれが『念』を掴み操ると言う才です。そのことに関してはエドは天才と言っていいと思いますよ」

 て、天才。そんなの初めていわれた! あ、そういえば零歳児だったわ。そりゃそんな経験ないわな。いやいや、そうでなくて前世も含めて初めて言われたよ。へへへ。

「ただし」

 師匠は、浮かれた俺を戒めるようにトントンと扇で畳を叩いた。

「積道を極めるには、魔力の具現化も必要ですし、純化の技術も必要となってきます。あくまで主となる才能に関してというだけです」

 あい、気を引き締めて精進します。

「付け加えるならば、魔術の段階ならば先ほどもいったように努力次第で習得は可能です。ただし、魔法となると完全に才能が必要な世界になってきます。私は積道に必要な才能は『念』を掴み操る技術だと言いました。しかし、積道をいわゆる魔法の域まで極めるにはもう一つの才能が必要だと私は思っています。そして、その才能こそ、私がエドを積道を伝えようと思った理由です。それは……」

 ……それは?

 ん?

 なんか師匠が途中で言葉を切って、上を見上げている。

「エド」

 はい、それは?

「あなた、どうやら拐かされたようですよ?」

 かどわかされた? えーとそれって拉致られたってことですか?

 ふーん。



 ……なんですとぉ!?




 

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