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MOB男な灰魔術師と雷の美姫  作者: 豆腐小僧
第一章 MOB男な新生児は他業無得の零才子
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003 夢枕でなされた彼と世界とその他のなんかにとって重要そうな会話

 ああ、人生が終わったのに夢は見れるんだな。


 俺は暗闇の中に立っていた。


 爆発による事故で、おそらく体が不随になったであろうショックから再び意識を失った俺。


 その俺が、以前と変わらない姿で暗闇に立っていた。暗闇からはスポットライトがどこからか俺を照らしていて、その中に俺は立っている。


 こちらが現実だったらどんなにいいだろう。そう思って、五体満足な掌をじっと見つめる。


 でも、これが夢だって言うのは、感覚でわかった。時々あるだろ? ああ、俺夢見てるってわかる時。それと同じ感覚。


 どうせ、もう体が動かないままなら、このままこの夢の世界で暮らすのもいいかも。

 闇しかないけれど、18歳で寝たきりなんて現実よりはマシに思えた。

 もしかしたら、お医者さんが直してくれるかもしれないが、こちらとしては俎板の鯉になるしかない。


 もっと一生懸命生きりゃよかったな


 今更ながらそう思う。別に不真面目に生きてきたわけじゃないけれど、もっと色んなことができたはずだ。


 本当に今更だけどな……


「そうでもないよ」


 突然の声。


 え?


 目を暗闇に向けると、遠くから誰かが歩いてくるのが見える。暗闇でなんで見えるのかと言うと、その歩いてくる人物が提灯明かりを持っていたからだ。


 んー? 目を細めてやってくる人物を見る。


 烏帽子を被った白装束の男性がこちらにやってくる。


 イケメンだ! 醤油顔で、流行の顔立ちじゃないが、歌舞伎のプリンスみたいな上品な顔をしている。年の頃だと20代後半。こんな先生がいたらモテモテだったろうな。ちくしょう!


「フフ。ありがとう」


 イケメン平安貴族が涼やかな笑い声を立てた。


 心の中が、読めるの!? というか、まだ距離があるのに、すぐ側で言ったみたいに言葉が聞こえる。

 その疑問に、平安さんが答えてくれた。


「この世界は、君の夢の中だからね」


 ああ、なるほど。しかし、他にも幾つか分からないことが。


「なんだい?」


 まず、その提灯。宙に浮いてるんですけど。


「浮いているね」


 あの……なんで?


「手で持ってるより楽だからだよ」


 いやいやいや。そういう意味でなくて、どうやって宙に浮かべているかを聞いておるのですが。


 平安さんが、また、涼やかに笑う。


「そういうことができる人間なのさ」


 ああ、そうですか。それも含めて次の質問。


 あなた、誰ですか。


 ようやく側までやって来た平安さんは、俺の質問に「ふむ」と少し思案した顔になった。


 あれ、そんなに答えにくい質問だったかな?


「いや、分かりやすく説明するにはどうすればいいかと思ってね」


 ああ、すいませんお気遣い、いただきまして。


「フフ。そういう気配りは大切だよね」


 平安さんは懐から何やら高そうな扇を取り出すと、軽く宙に向かってその扇を振った。


 何もなかったスペースに、畳が現れる。


「長い話になりそうだから、ゆっくり寛ぎながら話そう。といってもそれほど悠長にしている暇もなんだが……」


 そう言って、俺に畳に上がるように促した。


 おお、さすが夢の世界。なんでもありだな。

 そう思いながら畳にあがる。平安さんは更に座布団を二枚出して、その一つに座るように進めてくれた。


 あれ、ここって、俺の夢の中なんだよね?

 てっことは……


 俺は、平安さんとの間にあるスペースを見つめ、それから精神を集中させるように目を瞑った。

 具体的なイメージを頭の中で浮かべ、それをスペースに写す感覚。


 じわり


 卓袱台が滲み出るように現れた。

 平安さんに比べれば、スムーズじゃないけれどちゃんと思ったとおりに出てきた。

 さすが夢の世界。死神13の気分じゃぜ。ラリホー。


 平安さんが驚いた顔をしている。どうしたんだろう。

 すぐに嬉しそうに微笑んだ。しかし、この人本当にイケメンだわ。


 「さて、私の名前は、セドリック・アルベルト」


 おお! 意外なことに洋風の名前。


 「本名は別にあるんだけどね。そっちは日ノ本らしい名前だよ」


 日ノ本? 日本のことだよね。それはともかく俺の名前ですけど……

 自己紹介しようとした俺の口を押さえるように、平安さんことセドリックさんが、扇をすっと上げて遮った。


 「元の世界の名前を口にしないこと。理由は追々言うが、とにかくそれだけは注意してくれ」


 はぁ? わかりました。


 ん? 元の世界?


 「君の事はエドと呼ぼう」


 エド? また西洋風な。セドリックさんは日本人ですよね。という質問に彼が頷く。


 「全ての疑問に答えるには、君の置かれている状況を説明した方がいいだろう」


 その言葉に、俺の表情は自然と強張ってしまった。その様子を見たセドリックさんが尋ねてくる。


 「そう言えば、エドは先ほどなにやら落ち込んでいたようだが」


 俺はその質問に、痛みに耐えるように答えた。


 「ふむ。黄金色の爆発に巻き込まれて意識を失い、目が覚めても四肢も満足に動かせぬ上、目も耳も言うことは聞かないと?」


 はい……。ああ、言葉にするとますます現実が迫ってくる……。


 「その黄金の光りの意味はわからないね。しかし、体が動かず、五感も働かない原因はわかるよ」

 

 そうですか、どんな感じなんでしょうか? 瀕死の状態ですか?


 「何か誤解しているようだが、安心したまえ。エド、君の五体はどこも異常はない」


 え? じゃあ、なんで?


 「エド、まず君がいるのは日ノ本ではない。

 ここは君にとって異世界であり、今の君はこの世界に転生したエドゥアルド・ビスマルクという生まれたばかりの赤ん坊だ」


 なんですと?

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