EX end secret 終
僕は目を覚ました。
いや、起こされた。
うう、気持ちが悪い。
慣れないというより、初めての船旅。
同じ六歳児、旅の一行で何故か僕だけが船酔いになった。
折角の大運河を航行する魔導船に乗れたというのに、その殆どを船室で過ごすことになった。
「着いたわよ」
という冷たい声。別に僕に対して特別冷たいわけではなく、地声である。
体を何とか起こした僕は、ぼーと金髪碧眼幼女令嬢を見つめた。
「……」
「何を間抜け面してんの。さっさと下船の準備しなさい」
僕だけに冷たい訳では無い。きっとそうだ。
僕はさっさと自分の荷物を手に船室を出ていく後ろ姿をなんとなく目を追ってから、軽く頭を振って、酔を覚まそうとした。余計気持ち悪くなったのですぐ止める。
しかし、眠りが浅かったせいか、なんか変な夢を見た気がする。
いつもならレム睡眠状態の時には、仮想世界『箱庭』なんかで修行するのが常だったから、夢を見たのなんて久方ぶりかもしれない。
今回は船酔いから回復するため、灰魔術で『箱庭』及び『夢幻の塔』を起動しなかったのだが、この体調を鑑みるとあんまり意味はなかったみたいだ。
まだ、気持ちが悪い。
船室には窓はなく、どこにいるのかも分からないが、先程の言葉と、ざわついた空気感から推測して目的地についたのは間違いなさそうだ。
帝都、その最寄りの港である内陸港都市バゼル。
最果ての地、サウスギルベナから考えると三つ目の地方ということになる。
随分と遠くに来たもんだ。
ま、いいや。
僕は立ち上がりながら、唯一の財産である粗末な布鞄を手に取った。
どんな夢を見ていたかは知らないが、僕は名もなきMOB男。
エンドロールを迎えた物語の部外者である。
やりたいことはあるが、僕は『物語の中の人』じゃないわけで。
短いと言っても、先は長い。着実に行こうじゃないか。
とりあえず、帝都での物語に僕の出番はないのだろうし。
そんな気軽な思いで船室を出た。
特段、カンの良さなど持ち合わせてはいないにも関わらず、だ。