参
俺の元に、一人の男が訪ねてきた。
なんでも、俺に決闘を申し込むと。
強い魔力の波動なぞ感じない、ただの男であった。
話を聞いていると、どうやら男は、彼女を連れて行った外回りの先の村の男のようだ。
彼女を一目見て惚れ込み、彼女を掛けて決闘してほしいとのことだった。
どこか、面白くない。
なぜ自分が彼女を掛けて戦わねばならないのか。
実にくだらなかった。
彼女にここへ来るように呼び出す。
しばらく後、彼女は姿を現した。
謁見を望んでいた男の目は輝き、彼女に釘付けのようだった。
彼女を見ると、訪ねてきていた男を見て、次いで俺をじっと見つめてきた。
どうして呼ばれたのかを推し量っているようだ。
しかし、見詰め合っていると次第に彼女の瞳に熱が篭るのが見て取れる。
彼女は熱に浮かされたようにまっすぐ俺の元まできて、しな垂れかかりながら口付けてきた。
俺は、初めて少し余裕を持って彼女の口付けを受けることができた。
初めは触れるだけだったが、俺はいつか彼女がしたように彼女の唇を割って自分の舌を押し入れた。
彼女の口の中はとても甘くて、甘美であった。
夢中で貪っていると、彼女はそっと俺から離れた。
それを合図に、謁見に来ていた男が怒鳴り声を上げてきた。
無粋な奴だとは思うが、これが狙いだったりもする。
勢いだけで飛び掛ってきた男を、彼女を背に庇って一撃で沈める。
たわいもない…
男を冷めた目で見つめていると、急に彼女が俺に後ろから抱き着いてきた。
次いで、首筋に濡れた感触。
!!?
慌てて首筋を手で押さえて後ろを振り向くと、彼女はきょとんとした表情を見せた後、柔らかく微笑んだ。
そんな光景を見ていたのか、男の呻き声が聞こえ、その後完全に沈黙した。
どうも、彼女の方が1枚も2枚も上手のようだ。
いつか、彼女に対して優位になれる日は来るのだろうか…