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森を進み始めて1時間ほどが経過した。
最初に遭遇した化け物と同じ個体、若干個体差はあったものの
ほとんど変わらない、に遭遇した。
わかったことは最初の1匹を殺したのは火事場の馬鹿力でもなんでもないことと、
やはり自分の力がもといた世界ではありえないものになっていたことだ。
力に関しては、むしろ最初の1匹目では力が入っていない方だとわかった。
2匹目に遭遇した時、相手が気付いていないようだったので
後ろから走って近づこうと踏み出したとき、気づいたら既に目の前まで来ていた。
そのまま軽く腰辺りを蹴ったところ、上半身と下半身に分かれてしまい
出てきた内臓にまた吐き気を催した。
そうして色々試しながら森を進んでいったとこで、洞窟を見つけた。
「雰囲気出てんじゃねェの…」
真っ暗な入口の大きさは縦横2mほど。
奥行きはどれくらいあるかわからない。
足を一歩踏み入れると奥の方でカランカランと言う音が聞こえた。
「罠ッ!?」
その場をすかさず離れると、中からさきほどと同じ化け物数匹の中に、
1匹ローブを着ていて杖を右手に持っている。
杖をうえに掲げた化け物が何か言っているようだが、
「ゲゲギャギャ」という意味不明の言葉にしか聞こえない。
数秒して、杖が光り始める。
(なんだ…光が…こっちに来っ!?)
光のレーザーが化け物の前方に数百本と飛び出る。
(しまったっ…つい出てきちまった)
茂みに隠れていた煉が、光の当たったところを見て呟いた。
何も起きていない。つまりフェイク。
(ついわけわからない出来事に気が動転したみたいだ…
これは隠れた敵をおびき出すための…魔法?でいいのか…。)
そもそも魔法なんてあるのだろうか、と悩んだものの
先ほど目の当たりしたことを受け入れるのが先だと考えた煉はすかさず
戦闘態勢に入る。
大きな化け物の周りに6匹、棍棒や斧を持った先ほどまでと同じものが集まる。
化け物は杖をまた上にかかげた。
さきほどの魔法がフェイクだとしたら、今度は本当に攻撃だろう。
(だったら…!!)
距離はおよそ5mほど。
(今の俺なら多分いける…!!)
両足で地面を蹴る。
そのまま両手を顔の前でクロスさせる。
いわゆるクロスチョップだ。
化け物の顔面に直撃したが、勢いがありすぎて
そのまま煉は洞窟の中に入っていった。
ガァン!という音とともにゴロゴロと煉は
洞窟内を下に落ちていく。
(…いま、かいだんをころがり落ちてるのか?)
時々頭をぶつけるもののまったく痛みがないので
立つのも面倒だと考えた煉はそのまま色々なところをゴンゴンと
ぶつけながら階段を降りて…落ちていく。
5分ほどしてドシャッと言う音とともに落ちる感覚がなくなったので
煉が起き上がる。
「かなり落ちてきたな…」
立ち上がってみるとそこは大きな部屋。
階段の手前、部屋の側面に火がいくつもともっている。
薄暗いものの、部屋の中を見ることはなんとかできた。
「なんだこりゃ…」
部屋の真ん中に棺を発見した。
棺に近づこうと歩を進めたところで
部屋に声が鳴り響く。
《死にたくなければ、それ以上近づかず上に戻るがいい》