お城で舞踏会が開かれていたので、ガラスの靴をばら撒いてみた
気持ちよく空を飛んでいたら、足元から音楽が聴こえてきた。軽快な三拍子のワルツ。
目をやると、そこには灯りで煌々と照らされた流麗な建物。どうやら今夜は城で舞踏会が開かれているようだった。けど
……私、よばれてない
私はこの国の魔女だ。結構強いし有名な。
人間は嫌いだし、騒がしいパーティーも嫌い。だからパーティーに招かれてもいつも断ってる。
……でも、招待状すら届いていないとなると話が別だ。
だって仲間外れみたいじゃない。
箒の高度を下げて窓から中を覗いた。
…………人、いっぱいいる!
ふつふつと怒りが湧き上がってきた。
これだけ大勢招いたパーティーに、私、よばれてないっ!
咄嗟に火球を作りそうになって慌てて消した。流石にそれはダサい。人間に仲間外れにされて癇癪起こして城を焼くなんて、他の魔女たちに爆笑されてしまう。もっとスマートな方法はーー
思案していると城の鐘が鳴った。同時に一人の女の子が走り出てきて、階段にキラキラ光る靴を片方落として去っていく。
それを見送って、ピンときた私はポンと手を打った。
「よし、決めた」
ブンと杖を振る。光がふわりと舞って階段を覆い尽くす。光が消えるとそこには靴、靴、靴。女の子が落としていったのと同じデザインの、しかし大小様々なガラスの靴が足の踏み場もないほど階段を埋め尽くしていた。
そこに身なりのいい男が、護衛を振り切るように走り出てきた。そして階段を覆い尽くすガラスの靴を見て棒立ちになる。それを見て私は笑った。
「あはははっ!」
男がこちらを振り仰いだ。目が合ったのでニンマリと笑ってみせる。私の意図を理解したのか、男は憤怒の形相になった。
「このクソ魔女ー!」
「あははははっ!」
楽しくなって更に笑う。
潰してやったわ!運命の出会い()を!
最近、魔女の間で王族の恋愛を請け負う仕事が流行っているのだ。見目の良い女の子を飾り立てて劇的な出会いを演出。所詮作られた『運命の出会い』だ。でも高額報酬。
そこでよく使われるのが『ガラスの靴』。わざと落として、サイズのピッタリ合う人物を探させるための小道具だ。
でも私が作ったガラスの靴の山の中から、女の子が落としていったものを見分けるのは不可能。つまり王子は女の子を探せない。
ざまあみろ。私をパーティーによばないからこうなるんだ!
「こんの害悪クソ魔女ー!!!」
ガチギレした王子が叫ぶ。それを背に、私は笑いながらいい気分で月の綺麗な夜空を飛び去った。
害悪さん、めっちゃ楽しそう




