冒険83─長年に積もったモノ。
「はぁ、この感じ精霊王の気配に感じるのだ」
「精霊王ですか?」
「そうだ、姿がお隠れになってから、もう長い時が経っている。我が最後に見たのも本当に昔だ。何故、我ら達を置いてお隠れになってしまったのか。その影響で我らハイエルフになれるエルフも現れなくなり、この国の精霊の力も年々弱まっているのだ」
「えっと、そんな話を俺は聞いて良いのか?」
「良いのだ。我が話したいのだ。ソレにそなたには話しても、そして我の想いを託しても良いとさえ思える。これも精霊王様の雰囲気を感じるからか? そなたは精霊王に縁のある者なのか?」
いいえ、精霊王どころじゃなく神様ですとか言えない。むしろ、神様からしたら精霊王を創り出したのだとしたら、俺は精霊王とは異兄弟? みたいな扱いになってしまうのでは? そう思うと、とんでもない事をしてくれたな? と思ったりもするが、こうやって転生させてくれては生きてられるのだから、同じくらい感謝の気持ちもあるのに俺は気付いた。
「どうなんでしょうね。ですが、その精霊王がお隠れになった要因は本当に分からないのでしょうか?」
「どういうことだ? いえ、精霊王とは自然の顕現せし者とも聞きますから。その世界の自浄作用の1つかもと」
「はて? 自浄作用とはなんだ? それは旧時代の言葉か何かかの?」
「いや、何でもない。こっちの話だった。気にしないでくれ。でだ、何か今に続いて変化は無いのか?」
「いや、今話した通りだ。エルフからハイエルフが生まれなくなったのと、この国の精霊の力が年々弱まって来ている事くらいだ」
エルフからハイエルフというのは、進化と言っても良いのだろうか? そして、ハイエルフというのはエルフより更に精霊よりだとは今、抱き着かれていても感覚で漠然と分かる。そして、それが直感スキルが働いてるのか、的を得ているとも分かる。
なら、精霊の力というのは自然の力だ。自然の力が年々弱まって来ているということ? だが、周辺は大森林で間伐もしていては光が降り注ぎ、生き生きしてると思う。
「なら、根本的な部分で自然の力が奪われてる? なら、自然? 魔力? 魔力なのか……。それを奪っている装置。浄化作用の故障? なら、装置──」
そこまで、思考を働かせては最初の頃のウェストールを思い出す。
そうだ、魔力を喰う装置があるじゃないか。
それに大森林だから、ソレが無い?
そんな訳無いじゃないか。ソレはどこにでもある可能性があるし、人の手が有るなら、いや、冒険者ギルドが有るなら、当たり前の存在で共存関係を築いてるのが普通じゃないか。
「女王。変な事を聞くと思うが、ダンジョンは大森林にはあるのか?」
「ダンジョンとな? 確か、人の世界にある、魔物が生み出される悍ましい所よな?」
「あぁ、それだ」
「いや、我には分からぬ。えっと、我もこう呼んだほうが良いのか? 耳長は分かるか?」
「えっ?! 私、それで名前固定されちゃうの?! う、うーん。でも、今はそれどころじゃないか……。不満はあるけれども。うん、えっと、はい。ダンジョンというのには関しては報告は無いです」
「そうじゃが? それが何か関係があるのか?」
マズイな。どのくらい放置してるんだ?
そうだ、エルフの国は冒険者ギルドが関与出来てないと、ドルネルのギルドマスターが言ってたじゃないか。
まさかな、いや、そのまさかだ。そうなるとダンジョンがあればそれはずっとスタンピードを起こさずに魔力を溜め込んでいるのか、または成長しているかだ。
「汚れドワーフ。先に言っておく。自分達しか見ていないと今のような状況になる事が有るかも知れない」
「む? お主、何を言っているのだ?」
「女王、落ち着いて聞いてくれ」
「な、なんだ?」
「大森林内に、いや、もしかしたら、この国の近い場所にダンジョンがある可能性がある。ダンジョンは魔力を食らっては成長しては魔物を生み出したり、成長するモノなんだ。そして、時には魔物が溢れ出してはスタンピードと呼ばれる大災害が発生しては人の世界では大きな被害が出るんだ。でも、それは人の世での括りの中だ。女王の話が確かなら、それ以上の長期間、それも精霊王がもしかしたら、異変に気付いては今も防いでるのかも知れない。そんな状況かも知れない」
「な、ナニを、言って、おる?」
俺の言葉を1つ1つ噛み締めて聞いていた女王は足が最初は震えては力が入らなくなったのか、抱き着いていた状態から俺に縋り付くような形になってしまった。
「まさか、こんな所で役に立つなんてな──」
そう言いながら、俺はまずはドルネルの国王から頂いた、ドルネル国王の親愛の友誼を結んだ証の印章を取り出す。その後はドルネルのギルドマスターの紹介状や証書も同じく取り出しては女王に見せる。
「今すぐ、行動を起こしたほうが良い。エルフはドワーフに対して、肌が合わないのは知っている。だが、今はそうは言ってられない状況だ。女王、辛いと思うが踏ん張ってくれ」
「あ、あ、あ……「女王様──」」
震える手で俺の服を握り締めては狼狽えている女王を耳長が駆け寄っては支えてくれていた。
「耳長、悪いが女王が落ち着くまで、まずはダンジョンの有無の確認を──「分かってる。キミが本当のことを言ってるのも分かってる。女王様、ごめんなさい。少しだけ、独断で近衛のリーダーの私が動きます。キミ、一緒に探してくれるんだよね…? 頼ってもいいんだよね?」……はぁ、分かってる。乗りかかった船だ。まずはダンジョンの有無を確認しよう。お前達は女王を見ていてくれないか?」
「私はエルフの近衛に話を通してくる! 待ってて!」
「はぁ、アナタって偶に自分から巻き込まれに行くわよね」
「旦那様、分かりました」
「うむ。拙僧にこの場の守りは任せて貰おう」
「なるほど、コレが自分だけの視界の──だが、これは前にも話していた、悪い結果が重なった結果なのだろう?」
「あぁ、汚れドワーフ。その通りだ。だが、ここで気付けたのなら、まだ盤面を保てるかも知れない。後は任せたぞ」
「分かったわい。儂にも任せてくれ」
そして、耳長が他の近衛のエルフにある程度事情を話しては俺と耳長でまずはエルフ国を、そして大森林の周辺を駆けてはダンジョンを探しに出るのだった。




