冒険78─自分を持って見ているのは悪いことではない。でも、それだけで良い訳でもない。
「聞いていますかぁ? 天使様ぁ?!」
「え、えぇ。聞いてるわよ…?」
「いつもぉ、いつもぉ! ご飯! ご飯! ご飯!! それ以外もあると思うんですよぉ?!」
「そ、そうね」
王女……いや、悪酔い王女のご降臨だ。
とりあえず、生け贄として駄天使を差し出しておく。
いや、非難めいた目を向けられても知らんがな。悪酔い王女の主な原因は今現在は駄天使、お前自身だからなのか。責任を取ってくれ南無。
「なぁ、いつもあんな感じなのか?」
「王女ちゃんは酒が入ると化けるんだ」
「拙僧も今は慣れつつあるが、最初は驚いたものよ」
「そっか、色々あるもんな。王女も儂も、父上もそして、国民も国も、な。なぁ、酒の場だ。だから、聞くがどうしてこうなっちまったんだろうな? 父上、王の治世は悪かったのか?」
「なぁ、汚れドワーフ。お前は父に、王に何と言われたか覚えてるか?」
「何をとはなんだ?」
「はぁ。そこからか。汚れドワーフ、お前の基準はいつも自分視点で、後はこのドルネル視点しか無いんだ。王はそんなお前に外を知れと言っただろう?」
「それと今の話に何の関係があるというのだ?」
「外からの視野を持って多角的に見ろと言いたいんだ。そもそも、ドワーフの寿命は約500年、エルフは約1000年、ハイエルフに至っては2000年〜。ドラゴニュートは約200〜300年、妖精はほぼ不老とも言われているし、昔の文献の魔族なんかは更に分からんと言われてる。その中で人は長くても50〜100年だ。そんなそれぞれの視野と統治する国がある中で、否が応でも状況っていうのは変わりやすいんだ。人なんかは特にサイクルが早いから、その影響を与えやすいだろう。そして、人は人生が短く、人が変わるから歴史を忘れやすい。そして、そんな中でこのドルネルは一番サイクルの早い、人国とサイクルが長いエルフ国に挟まれると来た。そのサイクルの荒波を平穏に納めている自体が凄いんだ。だが、民衆は民草は外の空気に触れては感化されては、揺れ動きやすいもの。今回はそれに歯止めを利かす存在も居なかったんじゃないか? いや、酒の場だからこそ、奇譚なく言うと、その立場は汚れドワーフ。お前が収まる場でもあったんだ。けれども、お前は父の、王の背中を追っていて見えなかったんだろうさ。それが悪い事とは俺は思わないし、思えん。基本的には扇動されては火が点いては、自分は関係無いと見て見ぬ振りしていて、民草こそ今回は非があると思えている。だが、上に立つものも、下にいる者も、それぞれが共存関係にあるのは忘れちゃいけない。長くなったが、俺の言いたい事、伝えたい事は分かったか?」
「……お主はいつも、そんなに考えて行動しているのか?」
「は? そんなにとはなんだ。当たり前の事だろ? 汚れドワーフ、ボケるのはもう少し後にしてくれ。なら、そう思えるのなら、頑張れば良いさ。お前は気付いたんだ。後はお前なりに受け止めては受け入れて消化して、その血肉にしていけばいい」
「そっか、すまぬな」
「へっ。そう思うなら、早く汚れドワーフから卒業するんだな」
汚れドワーフといえば、どこかバツを悪そうにしていたコイツだったが、今の汚れドワーフの言葉辺りからは何故か考えるように受け止めるように、しみじみと頷いては酒を嗜んでいたのだった。




