冒険77─あの国は今……。
「此度は改めて、礼をさせてくれ。いや、貴殿の思いは知っているが、国としての示しとして受け取ってくれ」
そして、国王が改めてコチラへと頭を下げていた。
同じく、恭しく新衛兵の方たちも礼をしてくるが、俺としては居た堪れない思いなだけだ。
「分かった。礼は受け取る。それで呼び出した用件を知りたい」
「そうだな。2つある、願いたい事と、貴殿らに必要な情報だと思われる事の2つだ。どちらから聞きたい?」
「先に願いたい事から聞こう」
「うむ。儂の息子を貴殿の旅路に付き合わせて貰いたい」
「……は?」
なんだって? 汚れドワーフを? 表情に出てしまったが「まぁ、聞いておくれ」と王様が言うので、俺は話を聞くスタンスに戻る。
「外の世界を知って貰いたいのだ。余りにもアイツは儂を強く見過ぎている。アイツにはアイツの個性があるのだ。だから、一度、外を見させてやりたいのだ。ただ外に出るだけだと危険だ。けれども、貴殿らに預けるのならば別だ。だから、お願いしたい」
「お願いと言うことは、対価もあるのか?」
「ある。それは2つ目の事情に絡む」
「聞かせてくれ」
「2つ目の事情はウェストールの内情だ。遂にウチとは違い、本当のクーデターが起きそうだと情報が流れてきた」
「ウェストール!」と、王女ちゃんが反応を示すが俺はソレを目で制しては王に話の続きを優先させる。
「あぁ、貴族と貧民層、それと平民による争いだ。王族の話も今は情報が規制されたのか。ウチが抱えている間諜からの報告も鈍くなっておる。だが、案ずるが良いこともある。そこのお嬢さんの母上君は無事なのは冒険者ギルドで確認は取れておる」
「良かった」と王女ちゃんの呟きを聞きながら俺は考える。
「それが、その情報が対価なのか?」
「いや、それではない。貴殿らは旅をするのだろう? ここドルネルからの次の旅先と言えば主に2つになる。1つは先のウェストール、もう1つは聖都マリアージュだ。ウェストールは貴殿らの事情もあるだろう。だから、それは除外するとしたら、行くとしたらマリアージュになるだろう。ただ、問題がある。大森林を通る必要性があるのだ。あそこはエルフが住まう国があるという。ドワーフとエルフはなんだ……貴殿の想像通りだと言えば不甲斐ないが、多少は肌が合わない部分がある。だが、国交が無い訳では無い。だから、そこを無事に通過出来るよう、国の証明書を貴殿に発行するのが、息子の旅路に付き合わせる願いの対価にしようと思う」
なるほど、旅路の為でも有り、息子の為でもあるのか。強かだな。だが、そういう考えは嫌いじゃない。
良いじゃないか。なら、こちらも話に乗ってやろうじゃないか。どのみち必要になるのだ。向こうの気持ちが良い状態で受けるのも処世術というもの。
俺はその提案を快く受け入れては頷き返すのだった。
「では、話は決まったな!」
「おい、汚れドワーフよ! そろそろ、顔を見せんか」
「ち、父上。汚れドワーフ呼びは──」
「いや、お前は汚れドワーフだ。俺がそう決めた。拒否権は無いぞ? いつか、立派だと思えたら、その時は立派ドワーフだとでも呼んでやろう」
「なっ!?」
「ハハハ! 仲良くやってくれ。そして、息子よ今この時から、彼らと行動を共にするが良い。冒険者登録やパーティーに関しては儂からの餞別で向こうのギルドマスターには伝えておる」
「わ、分かりました」
……はて? 伝えていると言うことは既に確定事項扱いだったのか。
本当に食えぬ王様だ。周りはこんなに一癖も二癖も食えぬ王様の事を何故平和ボケだと思ったのだか、本当にどうしようもないものだ。
「まぁ、酒でも飲み交わせば仲も深まろう。儂のオススメの場所でも教えてやろう。呑みに行くが良い」
「良いのか?」
「あぁ、構わぬさ。店側も負い目を感じてるようだしの、ガス抜きは必要なのさ」
「なら、お言葉に甘えよう」
ウンウンと気を良くしたように頷く王様から視線を逸らすと、嬉しそうに、はにかむ王女ちゃんが見えては俺の心は一抹の不安が過ぎるのだった。
けれども、流れは変えられない。
俺達はそのまま王城を後にしては呑みに街に繰り出すのだった。




