冒険76─俺は辛いよ。
「落ち着いて来たのかね?」
「さぁ、どうであろうな。拙僧の目から見れば騒動後のエドからの回復と似ている事しか分からぬ」
「あぁ、エドか──」
いや、懐かしいな。
ほんの少し前の事なのにな? おかしいな? 俺、生き急ぎ過ぎじゃね? マジ卍ですわ。
「あ! やっと起きたわね!」
「おはようございま……いえ、こんにちは?」
「あぁ、まぁ。こんにちは、が正しいな」
ドルネル、ひいては王都自体が騒乱だったからな。
落ち着くまでは観光なんてしていられる状態でも無かったし、何よりも新たに冒険者ギルドと提携しては冒険者から集った、新衛兵隊も起用しては王都を警邏している始末だったからな。
極力、平和を愛して止まない俺は滅多に宿から出ないで過ごしていたのだ。
お陰様で、最初に汚れドワーフをぶん投げ入れてからは碌に湯屋も行けていないのだ。
正直、湯船に浸かりたい。何よりもドルネルは岩窟も凄く、それを活かしたサウナも良いらしい。マジで入りたい。いや、本当に。
だが、悲しいことに俺の、いや、俺達の顔は王都にそれなりに知れ渡ってるらしい。
ぶっちゃけ絡まれるのは嫌なので、色々とリスクを差し引きした結界、引き籠もってると言う訳だった。
「すみません、コチラ王よりのお手紙に御座います」
お手紙ね。なんという柔らかな表現。本来は勅命みたいなものなのだろうさ。
まぁ、綺麗な封蝋を切っては中を確認すると明日の謁見のお誘いだった。そのまま、この宿の女将に返事を渡せば良いとも書いてあったので、その通りに馳せ参じる旨をしたためては返すと、女将は恭しく受け取っては立ち去って行ったのだった。
「明日は出掛けるぞ」
「やっとね! それでどこに食べに行くのかしら!」
「王城まで王様に会いに行くぞ」
「えー」
お前だけだぞ? そんなに盛大に嫌な顔をするのは。
ポンコツ駄天使の横を見ると、イソイソと支度を始める王女ちゃんと、何が嬉しいのか、誇らしそうにしている物騒僧侶が居たのだった。
「っと、言う訳で俺は今日こそはゆっくり寝たいのだが?」
「ゆっくり寝れば良いじゃない!」
「そうですね、ゆっくり寝てください」
「いや、お前らに挟まれると寝づらいんだ。俺は」
「心外だわ!」
「天使様と私に不足があるのですか?」
「いや、だがら──はぁ、寝るか」
うん、この2人も外に出れなくストレスが溜まってるのだろう。
俺をギュウギュウにいつも以上に挟みながら寝やがるのだ。
俺の気持ちを知れ! そして、主を早々に見切りをつけて裏切った物騒僧侶は別室を取っては寝ていやがる。
今日こそは穏やかに寝ようと両隣の寝息を、いやに鮮明に聴こえては俺は今日も夜を越すのだった。




