冒険71─王子って若いんじゃないのか? これは良いおっさんだろ?
「はっ! あの王子まだあそこに座ってやがる」
「あぁ、みっともねぇ。お付きも居ない。助けになる者も居ないなんてな!」
おぅ……、コロシアムへと近付いて行く程にヤジが凄いな。
遠巻きに心配してそうな輩も居るが、ひと睨みされれば竦んでしまっては物陰に隠れてしまっている。
まぁ、情けないとは思わないさ。普通に怖いものな。けれども、彼らをここまで助長させては育ててしまったのは君たち大衆の意見や意思だということを忘れたらいけないと俺は思うんだがな。
「けっ、反応も無いしつまらねぇな!」
そんな言葉を吐き捨てながら、手に持った小石を、あろう事か王子に向かって投げつけるが、すんでの所で俺が飛び出てはパシッと受け止めてはポイッと横に捨てる。
「お、お前は……誰だ?」
そんな風に驚いた表情で見上げてくる王子を見てみればだいぶ、投げ付けられたりもしたのだろう。着の身はボロボロで、所々は風呂にも入ってないからか、くすんでいては正直──「臭いな、お前」と言ってしまった。
「なっ?! そんな事は……!」
「いえ、あなた相当臭いわよ!」
「確かに天使様の言う通りですね……」
「うむ。拙僧でさえ、そこまで臭くなるまでになった事はないぞ?」
「なっ、なっ──」
「おい、汚れドワーフ。湯屋に行くぞ」
「よ、汚れとはなんだ! わ、儂はこれでも王子で……」
「知らん! 今のお前は俺から見たら汚物だ! それに儂って、良い年齢なのに王子とか誇張するな。見ていて恥ずかしいぞ!」
「お、お前達は何をしにここに来て、儂をどうしたいんだ!」
「うるさいぞ! 話したくても臭くて敵わん! おい、物騒僧侶! 掴んででも持ってこい!」
「なっ?! 拙僧がコレを?! ぐぬぬぬ、仕方ない。主の命だ。ほれ、行くぞ!」
「なっ! 俺は明日のコロシアムの為に──!」
「それも含めて、まずは汚れドワーフ! お前が綺麗になってからだ。仮にも王族なら汚い姿を晒すな!」
「ぐぬぬ……」
そう言い放つと、悔しそうに歯噛みしつつも汚れドワーフは黙って静かになった。
そして、何故か髪をサラサラとすいては俺に見せつけるように「ふふふ……」と、自慢げに清潔さをアピールし始めた某王女ちゃんは思考の隅に追いやりつつ、俺達は湯屋を目指して汚れドワーフを拐っては向かうのだった。
後に残されたのは、ポツンっと先程まで汚れドワーフが座っていては血などで汚れた地面跡とポカンと一部始終を見ていた周囲の人達だけだった。




