冒険70─クーデター発生中。エマージェンシー、エマージェンシー。
「おう、そりゃぁ……災難だったな」
「アレがこの国の日常なのか?」
「んな、訳あるか」そう、言葉を話しながら、ここドルネルの冒険者ギルドのギルドマスターは俺達を招いたギルド長室から外の様子を見つつ、周囲に人が居ないのを確認してから「クーデターが起きたんだ」と言葉を零したのだった。
「クーデター? ドコの誰が誰に対して起こしたんだ?」
「この国は純粋な王権制度なんだ。だが、今世の王はなんというか無難でな、その王の世継ぎの王子もなんと言うか、無難。だが、そうだな……ドワーフらしいと言えばらしいのか? 鍛冶だけは好きでな。その他の事はどうもアレでな。だから、付け入る隙が大きかったのだろう。お役所や上層部でさえ、反王権派がゴロゴロ居てな、そこの筆頭の騎士団の団長が担ぎ上げられてはクーデターを起こしたのが先日だ。だが、やはり暴力と暴利に囚われてたんだろうな。一気に治安が悪くなっちまったという訳だ」
「おい、なんで俺の行く所行く所、こんなきな臭いんだ?」
「わ、私を見て言わないでよ! 天使の力、なめないで貰えるかしら?!」
いや、なめてねぇよ! だが、お前のいう幸運の恩恵を感じないってだけだ。お前はドコぞのキングボンビーか?
「な、なによぉ~?」と、涙目になってきていたので、とりあえず視線を外してはギルドマスターを見据える。
「それで、なんでギルドマスターも疲労困憊になってるんだ? クーデターに冒険者は関係ないだろう?」
「いや、それがな。暴利と言っただろう? 締め付けが凄くてな。人の外への流出を防ぐ為に全面的に通行規制を施そうと今しているらしいんだ」
「は?」
待て待て、そうなると、俺達もヤバいのでは? いや、そもそも旅も出来ん。
「後は、冒険者じゃなく。個人的にお前さんには困難があるかも知れんぞ」
「どういうことだ?」
「後ろの嬢ちゃんだ。懸賞金問題になってる。王女ちゃんの存在を嗅ぎ付けたら、奴ら動き始めるぞ?」
「おいおい……避けられないって事か? 王様は何やってるんだ?」
「見せしめに殺そうとしている」
「は?」
「奴らは王子をコロシアムに出場させては優勝出来ない際は王を殺すと興行にしてやがるんだ。愚かな王を見せしめにするって、お題目だ。王は無難だったが愚王ではない。平和を維持するというのも立派な統治だったんだ。ここの住民は平和にアグラをかいてはそんな当たり前の事を忘れていたんだ。そして、少しの好奇心が王をクーデターに巻き込んではどうしようもない所まで来てしまってる所まで数日で来てしまったんだ。王が処刑されたら本当に終わりだ。世継ぎの王子もコロシアムで殺す算段だろうさ」
「王子を助ける者は居ないのか?」
「目下の所は居ない。居たとしても暗殺されている。だが、王子は一人でも出ると言っている。王子側の方のパーティー上限は設けていないはずだ。そうする事で王子には誰も集まらなかったと内外にもアピールしたい為なんだろうがな。どうする?」
「どうするとは?」
「ここまで、話した俺にソレを言わせるのか?」
ふむ。 いや、分かるさ。お膳立ては十分だ。
それに「旦那様……私のせいでお手を煩わせて……」コイツ、王女ちゃんの件もあるしな。
「決まってるじゃない! ね!」
「うむ、拙僧も力を振るおうぞ!」
「はぁ……すまないな。やるか。おい、ギルドマスター。その王子は今どこに居るんだ?」
「ずっと、その時で飲まず食わずでコロシアムの前に居座ってらっしゃるぞ」
豪胆な事で。とりあえず、俺達は宿で休みを取ることも忘れては件の王子の下へと急ぐのだった。




