冒険66─何事も後始末が大変だ。そして、闇は根深かったらしい。
「ありがとう、ありがとう──!」
ぉぉぅ……引き剥がしたくても引き剥がせない。宗主さんという爺ちゃんを強引に引き剥がすことの良心が痛む心が俺にはあったようだ。
しかし、エド国で買った和服はズビズビと、どんどんと鼻水や涙で濡れ汚れていく。
「宗主様ッ──!」
おいおい、物騒僧侶、待て、ハウス、俺に宗主さんに感化して抱き着いて来るな。おい、あぁ~、もう駄目だ。
お気に入りになりつつあった一着は見事にズビズビと濡れていくのを俺は諦観した目で見届けるのだった。
「それで、地下の龍神様を救ったと。そして、物騒僧侶は冒険者登録とパーティー登録をしないといけないという流れか」
「あぁ、まぁ多少はこの国が落ち着くと言うか体裁を保てるようになるまでは直ぐには出るつもりは今のところは無いがな」
「そうだと助かる。正直、龍神信仰の総本部はズタボロだ。首都中も一斉に人が倒れたては、総本部から巨大な光の柱を見届けた発見者も多く居る。情報規制したくとも、首都の主要な人物達が揃いも揃って裏から操らていたというのもある。すまんが、外に出たくとも今は難しいのも事実だ」
「すまない。龍神信仰は今一度、私が立て直す。そして、新しい形で龍神様を今度こそは崇めようと思うのじゃ」
「あぁ、それが良いだろうよ。龍神もソレくらいが丁度良いはずだ。余り、言いづらいが、この土地の……いや、写し身を持っている存在が居る限りは魔力は供給されているだろうし、充分だろう」
「あい、分かった」
そうだ、そのくらいで良いはずだ。
変に崇め過ぎたり、縛ると第2の闇が生まれかねないのだから。
「して、物騒僧侶よ」
「はっ! っと、拙僧はやはり、物騒僧侶なのですな…」
「ハッハッハ! お主が主と認めた者がそうと決めたのだ。しっかりとな」
「はっ! 有難き御言葉。拙僧しっかりと尽くして参ります!」
「では、今を持って私の従者の任を解く! これからは龍神様に認められし者と一緒に龍神様の目となり心となり、そして物騒僧侶としても世界を共に見てくるのじゃ」
「ははっ! その命、その御心、しかと受け止めました。行って参ります! 宗主様!」
そんなお涙頂戴のシーンがあったのだが、お涙はもう俺の和服がビショビショだから勘弁なのだった。
「主よ、ではお背中を拙僧が流そうではないか」
「おう、頼む」
うん、唯一、湯屋での背中を流してくれる存在が出来た事は俺の嬉しさポイントだった。
これで、アイツらの襲来は防げるというもの。
そんな風に思った時が俺にも有りました。
その後に、そんな行動に焦ったのかアイツらは物騒僧侶を引き抜いては何を告げたのか「主よ、主の御心も分からずにすまなかった。拙僧も空気を読むというのを覚えるとしよう」と言い、後日は混浴を良いことにアイツらは襲来して来たのだ。
あぁ、大丈夫だ。背中しか許さなかったさ。
だが、物騒僧侶が増えたとてアイツらは寝る際は両隣を譲ることも無く、物騒僧侶も空気を読むという事をしたのだろう。別室で寝る次第だった。
俺の唯一の嬉しさポイント日は1日も持たなかったのだった。




