冒険62─いつだって人の欲望はおぞましい。
「おぞましい…おぞましい事じゃ。龍信仰の上層部は既に真っ黒なのじゃ。半数は思考を私のように奪われては半数は龍神様のお力をその若さと力と富に奪い続けているんじゃ」
「宗主様──何を言って「本当なのじゃ」」
「すまない、確認したい事がある。まずは若さとはなんだ?」
「アヤツらは既に200〜300生き長らえておる。そう、私の前で言っていた。龍神様の血と魔力を奪う事でソレを可能としておるそうだ。そして、人を増やしては同じく操り人形を増やしては、今は私をその操り人形を筆頭に龍信仰を行っては更に生け贄を増やしては龍神様を生き長らえさせては、その血と力を奪っておるのじゃ」
「何ということだ……そんな、拙僧達は」
「力の部分も分かった。富とは何だ?」
「富はそのままじゃ。力を得た事でこのエド国を背後から操っては全てをアヤツらは手に入れておる。唯一操れないのは外から来た者達じゃ。この土地の者は少なからずとも、龍神様の写し身を分けられてはその血を引き継いでいるのだ。私に掛けられていた思考を阻害する術も、その血の繋がり故に可能としているはずじゃ──そんな会話も私の前で、あろう事か常に瀕死の状態の龍神様の前で嬉しそうに語っておった」
「……ぐぬぬ」
バキッと宗主様の座っていた椅子の装飾品を物騒僧侶が掴んでいたのだが、力み過ぎた影響か粉々に砕かれてしまっていた。
「あぁ、俺のお気に入り…」とギルドマスターが嘆きの声を上げていたが、今はそれどころじゃない。
「瀕死なのか。それは思っていた以上にヤバいぞ?」
「あぁ、龍神様……申し訳御座いません。申し訳御座いません…」
「おい、謝罪も確かに大切だが、今はそうじゃない。龍神様はどこに居るんだ?」
「龍神様は総本部の地下におりますじゃ。総本部自体が龍神様を縛る強固な結界の役割…いや、そうだったのか、龍神様の力を転用しては弱らせた瀕死の龍神様自身を捕らえておるのじゃ。何ということだ、そうじゃ…そうじゃ…シーサンペントもアイツは龍神様の間に持ち込んでは龍神様を少しずつ、生き長らえさせると言って──」
「おぞましい……なんていうことなのですか」
「信者の風上にも置けないわね!」
王女ちゃんも開いた口をそのままに、駄天使に限っては激おこぷんぷん丸だ。
「おい、俺もそうだが。こんな爆弾な会話を聞いちまったが、お前さんら、どうするんだ?」
「……頼みがある」
「なんだ?」
ギルドマスターの言葉に反応してか、物騒僧侶がその手をギュッと握り締めては俺達を見てくる。
「拙僧からの……そうだ。クエストだ。クエストをお願いしたい」
「内容にも寄るな」
「このエドを、いや、龍神様を救って欲しい。た、対価は……拙僧だ! 拙僧をやろう!」
「いや、お前は要らん!」
「なぜっ?!」
いや、何故って。ここは超絶美少女なヒロイン候補とかが、その身を持ってお願いするとかが定番のシチュエーションじゃないのか?
なんだ? この直ぐに手を上げかける物騒僧侶(男)がそのシチュエーションに当て嵌まるというのだ?
おい、俺の加護やスキルとやらは本当に働いてるのか?
「アンタねぇ、私は何とかしたいわよ!」
「て、天使様と同じく。お役に立てるかは不安ですが、私だって……!」
「おお! お前たち……!」
おい、そこ勝手に盛り上がるな。
「分かっているさ。俺だって思う所は多々ある。物騒僧侶の件は保留だ。だが、龍神様の事は分かった。そのクエスト受けようじゃないか。なんたって俺は、俺達は冒険者だからな」
「お、おぉ……。感謝、感謝──」
物騒僧侶は感激したのかボロボロとボロ泣きになっているが、まだ何も始まってもいない。
「お主ら──だが、上層部、ひいては地下は危険じゃぞ? だが行ってくれるのかの?」
「あぁ。乗りかかった船だ。それに俺達の狩ったシーサンペントも浮かばれないだろうしな」
「えぇ、そんな利用されるなら、私が食べてあげるわ!」
「わ、私も天使様と同じく食べて…頑張ります」
「こんな感じだ。まぁ、任せろ」
「よろしく頼む」
宗主さんはそう言いながら、その頭を大きく下げる。
「なら、俺はお前さん達が留守の間に宗主様を守っていよう。ここはギルド長室はそれなりに安全だからな」
「ギルドマスター殿もかたじけない」
そう言いながら、物騒僧侶がギルドマスターに頭を下げる。
「さぁ、行くか。もしかしたら、宗主さんの思考阻害を解除したのも伝わっている可能性もあるしな。急いで行くぞ」
「ええ」「分かりました」「分かった」
そんな三者三様の声を聞きつつも、俺達は龍信仰の総本部へと一気に冒険者ギルドから駆け始めるのだった。




