冒険49─クラーケンやシーサンペントも居るんだよ! やったね!(いやだ!)
「うぉぉぉ!! 王女様、良く頑張ったな!!」
ボロ泣きである。ギルドマスターもとい、海の漢は情に熱かったらしい。女王ちゃんの話は概要は聞いていても実際の所を話して聞かせたら、物凄く感情移入したようで、後半からはズビズビと泣きながら話を聞いていた。
「かぁぁぁ! これが呑まずにはやってられっか!」
そして、更にアルコールの追加である。
仕事は大丈夫なのかと何故か、俺が心配になるレベルだ。
だが、どごぞの悪酔い王女様とは違って、アルコールが入ってもキリキリと手と足は動いては仕事をしてる様子。コイツのエネルギーの源は酒なのか?
「でだ? お前さんは何が目的で、こっち側に逃げる事を決めたんだ? 正直、ここらは海しかないぞ? 船でも使っては諸外国にグルっと逃げる予定だったのか?」
「いや、違う。そんなもんでは無い。もっと打算的な理由だ。俺とこの駄天使は海産物を食べたくてここに来ただけだ。駄天使に限ってはクラーケンやシーサンペントを食べたいらしい」
「……は? あの海の化け物を食べたいだって? ガハハハ!! これは傑作だ! やっぱ、おめぇさん面白い漢だな!」
バシンバシンと痛い痛い。
いちいちリアクションが大きいのだ。
俺の肩をまた叩きながらも、このギルドマスターは何をそんなに愉快なのか笑いながら酒をグビグビと飲み干している。
「ぷはぁ~。やっぱ度数が高いといいな! こう、胸が熱くなるぜ! で、クラーケンとシーサンペントか。シーサンペントは分からねぇが、クラーケンには実はアテがあると言ったら、おめぇさんどうする?」
「いや、そんな化け物ってくらいの危険なものは俺は願い下げ───「なになに! 私! やっぱり、幸運の天使ね! 持ってるわ! 気になるわ! 教えなさい!」おい、お前黙れ!」
いやいや、危険だと教えられ、誰がそこに突っ込みたいと思う? いや、思わんだろ?!
なのに、急にこのポンコツ駄天使はテンションがアゲアゲになったのか、エンジンが掛かったようにギルドマスターに話を聞こうと身体を前のめりにさせていた。
「て、天使様が気になるなら私も……」
いや、王女ちゃん、顔が引き攣っているのよ。
無理して、このポンコツに合わせなくて良いのよ。
信仰心って怖いわ。本心を何とか押さえつけて顔を引き攣らせても同意しようとする王女ちゃんを見ては俺は改めて思ったのだった。
「ほぉ、流石のパーティーだ! いや、クラーケンに関してはここ最近、ブイブイ言わせていた海賊を捕らえた時に賊の証言が有ったんだ。どうやら、最近の奴らが暴れ回らない理由に、奴らの根城の小島が奴の新たなテリトリーになってしまったとな」
「小島か、それは近いのか?」
「あぁ! 近い。この地図を見ろ、ここら付近らしい」
バッと地図を広げられては指し示される場所を見ると、確かにエーゲから程近い小島らしい。
小島の密集地だ。上手く隠れていたのだろう。
「なぁ、それってヤバくないか?」
「あぁ、ぶっちゃけヤバい。それに、そんな化け物が近くに巣食うとなりゃ、海の異変がそろそろ起きるはずだ」
バンッ──。
「マスター! 大変です!! 大漁の蟹がエーゲの港に現れては混乱を来たしております!!」
そんな発言の後に慌てたように受付嬢が扉をノックなしに押し開いては開口一番、そう言い放った。
「な? 酒を呑まずにはやってられんわ! おい! 緊急クエストだ! 蟹の討伐だ! 手の空いてる冒険者に片っ端から集めさせろ! おめぇさんも、手伝ってくれるよな?」
「あ、あぁ──」
いや、断れんだろう。それに顔が近い近い。圧が凄い!
「蟹!? 美味しそうね! 腕が鳴るわね!」
「ふふっ。旦那様、天使様との修行の成果を…この剣の錆びにして──」
おい、ポンコツ駄天使。お前の食い意地は本当に凄いな!
そして、王女ちゃん。どうして、そんな武道派みたいに。俺達のせいなのか? なぁ、俺達のせいなのか?!
とにかく、俺たちも再びドナドナされては蟹討伐へと赴くのだった。




