冒険41─まずは身分証明から。仮初めの身分、初めまして。
「ここがシチアの街ね!」
「天使様、ここシチアはエーゲ国の中でもそれなりに…中規模な街になります。主には水上都市エーゲから連なる運河が観光にも適したはずです」
「そうなのね! 運河! 魚も捕れそうね!」
「は、はい。確かに魚も捕れたはずです?」
おい、王女ちゃんは観光の話を振ったのに食に振るな。
全く、頭にはお魚料理が浮かんでるのだろうな。
それにしても、まずは宿…いや、ここは冒険者ギルドによって情報を得るか? 冒険者ギルドには魔法通信的な物もあったはずだ、俺達に向けての情報も流れてるかも知れないな。
「おい、観光も飯も良いがまずは冒険者ギルドに行くぞ! 王女ちゃんも身分証明、このままだと不味いから…名前を変えて登録するぞ」
後半は声を抑えて話し掛ける。
登録に関しての名前は偽装が可能だ。っと、言うよりは生体認証が基本的に信用されている分、表面上の名前は偽り放題という抜け穴が大きく空いているのだ。
生体認証部分は個々の魔力だ。
俺の場合は水晶を破裂させてしまったが、基本的には人それぞれ指紋のように魔力の揺らぎや属性が違うらしい。
この駄天使も等しくだ。割れはしなかったがこの駄天使も中々の魔力だったらしい。らしいというのは生まれては直ぐだったから、反応が安定していなかった事情もある。今、同じくやれば破裂するだろう。そんな気がする。
とりあえずだ。これで王女ちゃんの仮初めの身分証明を作れば何とか誤魔化し誤魔化しはやれるだろうという算段だ。
俺達の身分証明は今更変えづらい。と、言うよりはドラゴン報酬の白金貨がギルドの預かりになっている。大金をドブに捨てたくないというのが本音だったりもする。
「ようこそ、冒険者ギルドへ! 初めましての方ですよね?」
「あぁ、そうだ。それで、冒険者登録とパーティーのメンバーの追加をしたくてな」
「えぇと、登録をなさる方は…」
「こいつだ」
「よ、宜しくお願い致します」
「文字の読み書きは大丈夫ですか? コチラの用紙に記入をお願い致します」
「は、はい!」
王女ちゃんが書いている間に受付嬢にパーティー名と王女ちゃんの加入をお願いすると、俺達のパーティー名を聞いた受付嬢は瞳を一瞬大きく見開いては「少々お待ちを」と一言断ってから、裏側に行ってしまった。
「おう、嬢ちゃん書き終わったか?」
「えっと? 終わりましたが…」
「おお、悪い悪い。ここシチアの冒険者ギルドのマスターをやらせて貰ってる。パーティー加入の件も一緒に手続きしてやろう。すまんが俺の部屋まで来てくれないか?」
いや、有無を言わせない感じだ。
来てくれないか? ではなく、これは来いってやつだろう。
まぁ、断る理由も無く、俺も事情を知りたいが為にギルドマスターに着いていくのだった。




