冒険38─もうヤダ、この国。
「奴らを追え! 王女誘拐犯だ! 生死は問わん!」
そう、背後から聞き耳スキルが声を拾う。
あの宰相さん、相当ブチ切れてるみたいだな。
ギルドマスターも抗議の声を上げてるのが聞こえて来たが、そこまでだ。俺は2人を抱えては更に速度を上げてまずは王城の城壁を駆け上がっては貴族街へと躍り出る。
なんだなんだと貴族街の貴族達が降りてくる俺達を見てくるが知ったことがじゃない。
王城からも警告音が鳴らされては魔法で狼煙をヨロシクを打ち上げられるが、視界の隅に捉えては更に速度を上げる。
どこに行こうかは決めていない。
だけれども、脳裏には少し前に内地にあるこの国から、海を見てみたいと駄天使と話していたのを思い出した俺は進行方向的にも、海に連なる隣国の方向へと足が向いているのもあって、今この瞬間に行き先を決める。
「おい、駄天使! 海を観に行くぞ!」
「海! 海鮮物ね! いいわね! 生きましょう!」
ほんっとブレないなコイツは。
「あ、あの! せ、先生! どちらに?」
「お前は暗殺されそうになっていたんだぞ」
「それは何時ものことなので…」
「いや、違う。今回のは違うぞ? 王女ちゃんよ、学校卒業したらどうする予定だったんだ?」
「内政のお仕事をしようかと…」
「それが危険だと承知でも?」
「あ、兄の助けになるならば…」
この王女ちゃんは家族愛を信じるタイプだったか、いや信じようとして盲目になってしまっているのか。
「余り、こう言ったらアレだが、今回の暗殺は王女ちゃんの父──王様もその兄の王子も、王女は分からないがグルだぞ? お前を完全に殺そうとあの舞台は出来上がっていたんだ」
「……」
「あー! アンタ! 王女ちゃん泣かした!」
「泣かしたのは俺じゃない、この国、いや王族だわ!」
心外だぞ! と言外にコイツに言い放っておく。
いや、もう言外ではないや、直接的表現になっちゃってるわ。
「とりあえず、泣いてても聞いてくれ。だから、アンタを国外に連れ出す。その後は王女ちゃんの好きにしてくれたらいい。だが、俺もそこまで鬼じゃない。王女ちゃんが望むなら、いつか離れたいと思える時までは面倒を見よう」
「あっ! 私という美少女天使が居ながら告白ですか?! ねぇ!?」
「おい、うるさいぞ駄天使!」
なんだなんだ、この駄天使は。急に慌てたフリをしやがって。
とりあえず、黙り込んでしまった王女ちゃんはそのままに商業エリアの防壁も飛び越える。
後は平民、貧民層、更に牧畜や農業のエリアを越えて、森に入り込んでは初めての限界までの加護とスキルをフルで駆使した俺でさえ、疲れ切る寸前まで走りきったら、やっと森の中、ある程度の小山の中腹で休みに入るのだった。




