冒険36─なんで毒って甘くするんだろうね。
「おい、それはマジなやつなのか?」
駄天使を生け贄に貴族という皮を被ったハイエナ共に捧げて、ギルドマスターの自由を奪った俺はギルドマスターに例の話をすると渋い顔を更に渋くして険しい目でコチラを見てくるが深く頷いて肯定する。
まぁ、駄天使に限ってはハイエナ共に捧げる際に「このぉ! 覚えてなさいよぉぉ!」とか言ってた気がするが知らん。悔い改めろと思って放り込んだ次第だ。
「なんか、毒が含まれてるという証明は出来ないのか?」
「それなら、俺が持ってる状態異常避けのアーティファクトを使えば分かるが、それだけで奴らも納得はしないだろうさ」
「だよな、何もよりもそれが露呈した後の王女さんはどうするんだ?」
「そんなの俺の知ったことではないぞ? 俺はただの一介のギルドマスターだぞ?」
「でも、この国のギルド本部のマスターなんだろ?」
「あのなぁ…相手は貴族なんだぞ? 元より持ってる奴らからすれば持たざる者筆頭の冒険者なんて、目の敵にされて当然の存在なんだ。そもそも、王の道楽で今回の褒賞含めてパーティー開かれてるって揶揄されてる位なんだぞ?」
うげぇ、それは聞きたくない話だった。
どれだけ王家の力が奪われてるかも、良く分かる話だ。
「可能性があるとしたら、身分とか関係無い場所に逃がす位じゃないか?」
おい、その目をヤメロ。辞めてくれ、お願いします。
なんか、期待を込めた目で今この瞬間に俺から見たらクソに成り下がったギルドマスターが俺を見てくるが、今度は俺が渋い顔を作る番になってしまった。
「王女ちゃんが望んでるとは思えないぞ?」
「お前、自分の死がベッドされてる中でそんな酔狂な事言えるか?」
「言えないが? 何か?」
はぁ~、とギルドマスターがため息を吐くが吐きたいのは俺の方だ。
それになんだ? 絶対にこの舞台を整える為に暗躍してる奴が居るだろう。
王様の道楽? んなはずが無かろう。入れ知恵をしたクソ野郎が居るはずだ。
そして、この舞台で解決しようとしてるんだ。
機会がなかなか無かった所に、ここの所のドラゴンモドキで国が潤ってはドラゴンだ。
晴れ舞台としても暗躍する舞台としても最適だと思ったろうさ。俺からすれば反吐が出る。
「では、これより王様より、授与式を執り行いたいと思います。皆様、ご歓談の中、どうぞお聞きして下さいませ。では、まずは始まりに伴い、希少な1杯を振る舞いたいと王より厳命が有りましたので、皆様どうぞ! 此度の功労者の冒険者様も王女様への盃への注げる功績をあげましょう」
はぁ? どんな功績だよ。
駄天使は顔が固まってるし、サッと渡された甘い匂いのするお酒は見た瞬間に俺の危険予知が働いている。
どんだけ猛毒なんだよ。
隣を見たらギルドマスターが頷き返してくれるし、まだ何も知らずに堅い表情で近辺の貴族と歓談していた王女の下へと俺は酒を両手に携えて近付いて行くのだった。




