冒険29─俺ってダメ野郎なの? いや、そんなはずはない。
「さて、まずはドラゴンの件と合わせての話になる」
眉間のシワを持ちながらギルドマスターは話し始めた。
後ろの受付嬢も心なしか表情が強張っている。
「まずはドラゴンの販売先だが、王家、魔法師団、王家直属の騎士団、その他、余り次第公爵家等へ王家が買い上げては下賜するようになるだろう」
「…は? いや、それって」
「そうだ、貴様の想像通りだ。国家ぐるみの話なるし、貴様はそれに巻き込まれというか、責任を負うことになる」
「待ってくれよ! 俺は一介のただの冒険者だぞ?」
「何を冗談言ってやがる。ただの冒険者がドラゴン丸ごと1頭なんて持ってくるわけ無いだろう」
「逃げる事は有りなのか?」
「お前さん、誰の前でそれを言ってやがる。それにそんな事したら、ある意味指名手配かかるぞ? いいのか? この国ならず、冒険者ギルドは世界を股に掛けてるから、お前さん相当生きづらくなるぞ? 腹を括るんだな、男だろ?」
「おいおい、そこで男を持ち出すな。女だってやる時はやるんだ、な? お前、代わりに出てくれよ」
「な、なななな、何を言ってるんですか?! 無理ですよ! 無理! アナタが出てくださいよ!」
「お前ら、何言ってるんだ? パーティーでの討伐で、パーティーでの褒賞になるんだぞ? お前ら、2人共が呼ばれてるんだよ」
「ええええええ?! ど、どうしてくれるんですか!!」
「おい、今更慌てるな! だから、面倒になるって俺は言っただろ!」
「だ、だってぇぇ…」
おい、泣くな。鼻水を俺の服の袖で拭うな。
服も無いんだぞ! 金だって、今夜の泊まる場所だって…あ。
「あの、つかぬことをお聞きしますが」
「なんだ? なんかまだあるのか?」
「いえ、その褒賞? 貰えるまでは期間はどのくらいで?」
「あぁ…まだすったもんだ、ゴタゴタしてると聞いてるから早くても来月の頭だろ。まだ2、3週間は掛かると思うぞ」
「な、なるほど。あのですね、つかぬことをお聞きししますが、俺ら、金が無いんですよ。服も今着てる位のが唯一の真っ当なやつで」
「は? 何言ってやがる? 冗談だよな? ドランの街では新星の高ランク冒険者って聞いてるぞ? 無いわけ無いだろ? 湯水のような金を何に使ったってんだ」
そうですよね。分かりますよ。
えぇ、分かります。
ほら、お前も分かったろ駄天使。お前がどれくらい贅沢をその身に宿していたか。
「コイツです。コイツの食費です」
「な! 何言ってんよ! アナタだって、高いお酒飲んでたじゃない!」
「俺のはご褒美だよ! それに少しだよ!」
「わ、私だって!? 少しだもん! 少しだもん!」
「少しのはずあるか! このバカ野郎!」
「あ! バカって言った! バカって言ったわね!
」
「お前ら落ち着け!!」
ギルドマスターの一喝は怖かった。
俺もコイツも瞬時に静かになるくらいに。
背後に立ってる受付嬢の目線はもうゴミ虫を見るような目になってるが知らん。
俺が悪いわけじゃない。悪いはずがない。多分。
「着る服も? 宿代も? 湯屋代も? 飯代も? 無いって? お前ら、良く生きてるな、それで。とりあえず分かった。何か仕事を斡旋してやるから、今日は前払いしてやる、とりあえず、今日は王都の雰囲気を覚えろ。いいな? 無駄遣いは絶対にするなよ? 俺は忠告したからな? 宿も紹介はしてやる。だが、覚えとけよ? 俺の顔があっての紹介だからな? 泥を塗ったら覚えとけよ?」
「「は、はい」」
そうして、俺達は追加の連絡が有ったら連絡が入れるから活動拠点を王都にするように厳命をされつつ、それまではクエストをこなすのを話しつつ、今日は王都へと放出されたのだった。




