冒険23─金ってな稼いでも消えるのも早いんだ。悲しいよな。
一旦寄り道すると寄り道が本道になるくらい長くなる時ってあるよね?
分かる? 俺の言いたいこと。
あぁ、そうだよ。アイツは味を占めちまったのさ。金策っていう、どうしようもない寄り道にな。
あれはそうだな。表現は難しいが育成ゲームでメインストーリーそっちのけで一旦育成入るとトコトンやり尽くしてしまうのと同じ要領なのかも知れん。
22層のレッドボアは毛皮は防具にも、防寒具にも、後は普通に革製品としてもインテリアとしても重宝するし、その肉も美味として結構至れり尽くせりの奴だった。要は売れるんだ。アイツはそれに味を占めてしまったのだ。もう少し下るとドラゴンモドキも出てくるらしい。その肉や素材も結構貴重らしくて、要は30層へ行くという本来の目的からどんどん遠のいて行っているんだ。いや、懐は暖かくなってるだけれどもな。
「で、ステーキは美味しいか?」
「最高よ! 何枚でもいけるわ!」
「さいですか」
あぁ、少し盛った。
うん、盛大に盛ったわ。
コイツは贅沢にも味を覚えちまったんだ。
このステーキが良い代表例だ。
結構、金が掛かるんだよコレ。
今の1枚も銀貨1枚だ。何が言いたいか分かるか? こいつは見事な自給自足になってるんだ自転車操業ヨロシクじゃないが、手元に残るお金は微々たるもんなんだ。要は懐の暖かさは常にホッカイロ位が少しずつ積もってるようなもんだ。
「さて、次はスイーツね! パフェ食べたいわ!」
「あっ、終わったわ」
「何か言った?」
なんでもないですよ。えぇ、ただなけなしの金という名のホッカイロ位の暖かさの懐が寒くなっただけの事。
おかしいな? お金貯まると思うんだけどもな? いや、ギルドの受付嬢曰く、結構コイツのお陰でドランの経済が潤ってると言ってたけれども、アレ絶対嘘じゃないわ。コイツのグルメへの探究心は経済を向上ならぬ潤してるわ。
神の言っていた、1滴とかじゃないわ。
コイツは洪水を起こしかけてるわ。
まぁ、いいさ。
残るのは後は経験値位か。うん、レベルアップも凄いんだ。いや、元から加護とかスキルがマシマシだから、こう…何が変わったとか良く分からないというのも無性な気持ちになる要因なんだろうけれども。
とりあえず、俺はコイツのパフェの食べてる姿を見つつ、そっとほっぺに盛大に付いてるアホの象徴のクリームを取っては食べてやる。
まぁ、甘いわな。クリームもだし、俺がコイツへの対処もだろうが。
いっちょ前に顔を少し赤くするなら、もう少し上品に食べてくれ。
はぁ、そんな感じだ。
晴れて冒険者のタグもシルバーになったが、今はゴールドのタグも目前かも知れん。
解体屋のおっちゃんがまた申請するみたいな事言ってたからな。
なんだか、目立つのも嫌なんだよね。
出切れば無難に生きたくない? そう思うの俺だけかしら?
「お腹いっぱい…」
「そりゃ、良うござんした。ほら、残りは食べてやるから湯屋行くぞ。俺はもう眠い」
「あ、歩けない」
「はぁ、肩貸してやるから。ほら、行くぞ」
コイツは本当に美少女天使なのか? 天才なのか?
いや、違うな。 大飯喰らいの駄目天使。駄天使だな。俺の中の決定した瞬間だった。




