冒険21─美味しい仕事なんて滅多にない。あるのは常に正当なお仕事だけである。
美味しい仕事っていうのは、どこの世も早々無いものらしい。
うん、ダンジョンから持ち帰ったものは消える前にアイテムボックスに入れた素材各種や魔物だな。
どうやら地べたにそのままにしていたら、ゆっくりと消化されてく模様だ。
それなら朝見かけた遺品探しとか、確かに望みはあるんだろう。
それにそれも需要が合ったのは買取した時に分かった。
うん、供給量も安定しているから、総じて買取価格も安いんだ。
俺達の場合はチートのアイテムボックスが有るからまだしも、基本的にはちょこちょこ持ち帰ったり、これもまた朝見た時に需要が有った荷物持ちとかに任せて出来るだけ多く持ち帰るように創意工夫を凝らしているみたいだ。
立派な生存戦略だろう。
上手く、需要と供給が噛み合ってるということだ。
「はいよ。これが買取金額だ」
あ~、やっと寒い懐が多少暖かくなる。
どっかの誰かにバカスカ浪費されたからな。いや、本当に使われたからな。大切にしないと。
「よし! 終わったのね! 行きましょ! お腹減ったわ!」
「……はぁ」
「なによ? 文句あるの?」
文句は無いが諦めは得たよ。
本日の収入も見事にその華奢な身体の何処かのブラックホールに収まるんだろうよ。
昨日のお店に味を占めたのか、今日もギルド併設の食堂じゃなく外のお店で済ませることにした。
「へい、らっしゃい。ご注文は?」
「らぁー麺だと…?」
「あなた以外にもちょこちょこ似たような境遇の人は居るからね! その名残みたいなものよ!」
「さいですか」
まぁ、何となく気付いてましたけれどもね。
ご飯のレパートリーや生活環境の端々に見受けられる利便性とか、どう見ても異世界と良い感じにブレンドされてますもん。
いやぁ、色々と先人や、もしかしたら今も居る転生者の方々も必死に生きてるんでしょーね。
俺も必死だよ。
稼いだ収入も今もドンドンとらぁー麺に消費されて行ってるのだから。
替え玉ならぬ、新しく違う味を頼んでは綺麗に食べてるのだから、やっぱりコイツは別格らしい。
コイツの隣に座ってる爺ちゃんなんて、驚きで食べる箸が止まってるぞ。
麺伸びるぞジジイ。
いや、俺も止まってたわ。食べよう。
あぁ、俺もこの麺のように太く縮れても長く生きるんだ。
あっ、豚骨ならぬ魔物骨スープが良い感じにちぢれ麺に絡んで美味いわ。
「大将! 次は醤油ラーメン! 本日の魔物チャーシューもトッピングで! 麺硬!」
「あいよ!」
スッと大将がこっちに手を差し出してくる。
うん、2杯目からはずっとこうだ。
そして、銅貨3枚を渡せばニコニコとらぁー麺を作っていく。
完全に俺の懐が寒くなっていってるのが分かる。温かくなるのは俺のお腹の中だけだろう。
ズズッと啜っては涙のしょっぱさか分からないスープを啜っては駄天使と湯屋に向かうのだった。




