冒険117─崩壊のウェストール。そして始まるウェストール。
「酷い──」
王女ちゃんがそう言っては膝から崩れ落ちていた。
あぁ、そうだろうな。
向かいながら、ウェストール内の街ドランにも立ち寄った。
ドランは懐かしい記憶だ。駄天使とドラゴンモドキをバッタバッタと薙ぎ払っては乱獲した所だ。
でも、その街でさえ、影響が有ったのか、所々住居は崩れてはいたが、確かに生活の場は有ったのだ。
しかし、王都ウェストールはそれが無い。
無いと、言うのは無いのだ。
きっと、戦術兵器というレベルの魔道具や武器を使ったのだろうか? 王城は消し飛んでいるし、所々クレーターが出来ては、戦火の爪痕が穿っては地面が抉れてもいる。
「精霊の力が極端に弱っている気がする」
「あっ、あの辺りは美味しいケーキ屋があった場所」
耳長は分かる。おい、駄天使、空気を読め。
ガックリ膝を落としていた王女ちゃんが目のハイライト消えつつ、苦笑いしてるぞ。
失言に気付いたのか、取り繕おうとしてもグルメのご飯屋さんしか出てこない辺り、流石ポンコツ駄天使だ。
まぁ、この悲観的な空気感が少しは緩和されたから良しとするか。
「とりあえず、冒険者ギルドへ向かおう。通信が出来ていたと言う事は建物は無事のはずだ」
そう、俺の言葉で皆一同、歩みを再開するのだった。
「はい、どーぞ」
「いつも、ありがとねぇ…」
そんな配給している風景が冒険者ギルドの前で行われていたが──「お母様!」と、王女ちゃんが叫んでは向こうも王女ちゃんを見つけたのだろう。その手に持っていたオタマを取り落としては「えっ、嘘……」と驚いた様子で固まっていた。
そして、固まったのは俺たちもだ。
王女ちゃんの母は女王に即位しているはず、その女王が配給をしているなんて。いや、そうだ。もう、その位にウェストールは疲弊しているのだ。
親子は駆けあっては抱きしめ合ったのだった。
「娘をありがとう御座います。いえ、王女ちゃんかしら?」
「母上!」
「ふふふ」と女王は笑っているが、現状は笑えない。
冒険者ギルドも半壊していては、何とか魔物の毛皮等を屋根に見立てては、何とか部屋という体裁を保っているような状況で話し合っているからだ。
「ギルドマスター、どんな状況なんだ?」
「どうもこうもない。見ての通りだ。ここから見える光景が今のウェストールの全てで、生存してる人も配給に来ている人がほぼ、全てだ。他は──死んじまった」
王家が秘蔵の自滅装置を発現させたとの事だった。
ギルドマスターも女王もまだ、その時は冒険者ギルド内に居たが、周囲一帯を消し飛ばす程の暴風と魔力の嵐が襲っては、冒険者ギルドはそもそも、防衛状も強固に作られていたので、ボロボロになるくらいだ。
その他の建物に居た者、外に居た者は勿論、王城へと攻めていた民も全てを巻き込んでは死んでしまったらしい。
最初はそのまま放置すると臭いが酷くなるのと病気の恐れがあったので、その処理で奔走したそうだ。
今はやっと、瓦礫の撤去に乗り出したそうだが、見ての通りらしい。
人も居ない。女王と言っても──と言うことだ。
確かに、もう暗殺者とかそういう問題以前の問題だ。白紙になったようなものだった。
「なぁ、どうすればよい?」
「それをギルドマスターが俺に聞くのか?」
「違う、お前だから聞くんだ」
「どういう意味だ?」
「お前、王様になるんだろ?」
「は?」
「いや、だって、お前。王女ちゃんと結婚するんだろ?」
「……そう、だな。あぁ、そうだ。そうなのか!?」
「お前、まさか、今更気付いたとか言わないよな?」
「……」
「嘘だよ、な?」
「あ、ああ。任せておけ」
いや、ごめん。色々と有りすぎて抜けていたとは言えないぞ!?
それに任せておけと言ったがどうする!?
なんだか、後ろでは王女ちゃんは俺を熱い目線で見てくるし、他の皆も大きく頷いているし。
旅の終わりは予感していたけれども、ここに来て王様だと? 最初は小さな村とかの経営からじゃないのか? どうした? 梯子どんだけビュンビュン飛ばしてんだ、俺は? いや、待て、冷静になると。今はまっ皿ということか、確かにアリなのか?
俺は暫く脳内でパニックを起こしつつも、現状を少しずつ受け入れ始めるのだった。




