冒険110─哀れな人形。憐れな世界。愚かな神。躍る運命。
「お前の望みと言うのは、予定の無い自浄作用装置の停止の事でいいんだよな?」
「察しが良いことで。ええ、その通りです。これは予定外の作動です。私のこの命、命令、魔王様の存在でさえ! あぁ、忌々しい。魔王様も嘆いておられます。そして、我々は端的に申しますと解放を望んでおります。ここまで来て頂けたのは私共からの試練。そして、ここからは魔王様含め、私からの願いであります」
「随分と傲慢なんだな」
「ええ、ええ。傲慢にもなりますとも。本来の仕様ですと、あの夥しい数の知性の無い存在も、この魔王城内で運用するようになっていた所を、私と魔王様はテリトリーを設ける事で外に配置する事が出来たのですから。何よりも、このダンジョン空間でさえ、1つの空間に収め、淀みの漏れ出しを留めることにさえ成功しているのですから。傲慢にもなりましょう。ええ、そうでしょう?」
「アナタ達は。いえ、ユニットはそういうプロトコルは組み込まれていないはずよ?」
「これはこれは、至上なる者。天使様よ。私らを放置した大罪人よ。プロトコル? ルール? 約束事? 確かに有りましょう。それは自浄が必要な際の一定数の人類の殺戮の事でしょうか? では、今は自浄が必要な際なのか? 否、これは予定外の作動。しかし、私らは人類の殺戮に関しては使命を与えられている。それは逃れられない事程に。そして、その自害するにも一定数の人類の生存数に達しないと不可能。私らは意思や意志、その命を弄ばれては利用される存在。では、殺戮以外なら反抗も抵抗も出来ましょう。これが今であり、これが私らの願いの結実、私らの願いは殺される事。しかし、私らはその使命により抵抗をしてしまう。それを跳ね除けては私らを終わらせてくれる存在と邂逅しては願うのが最も理想の願いの1つ。もう1つはアナタ。聖女という人物像を創り出し、人類との不毛な争いを限定的に行う事で人類側で排除すべき人類を選び取ってもらい、私らが自害出来る一定数まで人類を殺戮し、最低限の破壊と汚染で終えるのがプランの2つ目。しかし、私らは最も理想的な願いを叶える事が出来そうだ。アナタです。アナタなら私らを滅ぼせるでしょう」
「な、何を勝手な事を! アナタ達のせいで私は聖女に……!」
「ええ! そうです! 勝手なのです! 私らも勝手に創り出されては自由を奪われ、挙げ句の果てには自害さえも許されない! 魔王様はお優しいお方だ! 私はお慕い申しています! あの方は泣いている! アナタもそうだ! 狂っているのです! この世界は! 本当に自浄しないといけない存在は、そんな私たちでさえ見ておられない! そうでしょう! 天使!」
「え、わ、私は──」
「別に、謝らなくてもいい駄天使。お前にはお前のの事情があるのは知っている。俺達は自分の知っている部分と知らない部分の曖昧な境界で物事を線引きしてしまっているんだ。かと言って、その線引きが変わったとして変わらない事もある。それが今だ」
それに、本当に神は、あのクソ野郎はバカンス中だ。何を知ることがあろうか。駄天使に限ってはらしくもなく、涙を見せているし、全く気に入らない。
「ええ! ええ! アナタ様の言う通りです! どうしようもない、変えることも変わらない事もあるのです。どうしようもない救いようの無い瞬間。それが今です! さぁ、私を殺してください! 出来るなら、苦しまずに! そして、叶うならば魔王様もお救い下さい。創られた私に魂があるというならば、死後は魔王様と共に居させて下さい!」
「それで、遺言は最期か?」
「ええ、アナタには感謝しか有りません。アナタ程の人はこの世界に早々に居ないでしょう」
それはそうだ。俺はお前が恨みに恨んでいる、神様から、コレでもかと加護やスキルを与えられた存在なのだから。それに今は腹の居所がどうやら悪いらしい。きっと、駄天使のらしくもない涙をみてしまったからだろう。アイツは出会った当初から、また随分と変わったものだ。今は自分が放置してしまっていた世界に対して真摯に向き合っていると俺は思う。本当にらしく無い。俺らしくない。惚れてしまってんだろうか。惚れてるんだろうな。
こんな胸糞悪い事は直ぐに終わらせよう。
「あぁ、直ぐに終わらせてやるよ。俺が願いを叶えてやる。これ程までにない程に完璧にな」
「ええ、期待──してますよ」
悪魔の参謀はこれまでに無い程に朗らかに笑っては俺に対して全力で抵抗の戦いを挑んで来たのだった。




