冒険108─終わりの終着点。穿たれた世界の闇。
「改めて見ると酷いものね」
「大丈夫か、耳長?」
「えぇ、慣れてるとは言えないけれども。大丈夫、それよりもツンデレ聖女は大丈夫なの?」
「いや、どうだろうな?」
後ろを振り返ると、駄天使と王女ちゃんに付き添われてはツンデレ聖女が着いてきていた。だいぶ辛そうだ。体力的な方面もあるかも知れないが、根本的な部分はこの死の道だ。食い荒らされた死体に、燻った臭い、腐敗臭、どうしようもなく進む道は遠征軍が通った道で、その使い捨てられた軍の惨状がそこかしこに転がっては腐敗しているのだった。
「ふむ、そろそろ儂達が引き返した場所になるぞ」
死の道を歩いては数日、俺達はツンデレ聖女を救い出した地点へと辿り着いていた。
「ふむ。分かっていた事とはいえ、拙僧にも辛い光景だ」
物騒僧侶がそう嘆いては周囲を見渡すが、確かに散々な光景だった。魔物、悪魔、人類側も含めて、多数の死体がそのまま野晒しにされており、死の雰囲気がコレでもかと充満していた。何が怖いかと言うと軍兵の死に顔だ。苦しみに満ちた顔もあるが、ほとんどは薬の影響か、狂ったような顔で最期の顔を迎えている者が多かった。俺達は誰が先かという訳でも無く、祈りを捧げては黙祷をし、魔王ダンジョンのある方面へと改めて、進み始めるのだった。
「こんなにも何も無いと逆に怖いわね。キミは何か見えたり、聞こえたりする?」
「いや、俺にも分からん。ま、居ないのなら遠慮なく進ませて貰うだけだ」
耳長もその目と耳を持って、周囲を隈無く警戒してくれているが、アレから魔王ダンジョンへ向かう道には魔物、悪魔含めて何者も現れる事はなく、俺達は順調という表現はおかしいのだろうが、進んで来られていた。
ただ、1つ違和感を感じるとしたら皆がそうだが、何とも言えない気持ち悪い空気みたいなモノを進む度に重くなっては感じているということだ。
まぁ、それの正体も何となくは想像がつく。皆も同じなようで、これがきっと淀みなのだと俺達はそう結論を出していた。
途中からは影響が出ないように駄天使に一人一人バリアを常時張って貰っては進むようになった。
そうして、進んでいく中でやっと俺達は終点だと思える場所に辿り着いた。
「ヒッ──」
「大丈夫ですか?」
「皆、一度私に集まって、バリアを張り直すわ!」
ツンデレ聖女と王女、それに駄天使がソレを見てはそんな反応を返していた。俺でさえ、眉を上げては改めてソレを見返していた。
ソレは大地に穿たれた巨大な穴。いや、真っ暗でポッカリと空いた黒いナニかだ。
加護やスキルの盛り沢山の俺でも、酷くイヤな気配を感じるのだ。何もない人では寄り付くことさえ、忌避するだろう。駄天使の迅速な判断は正解だったと言える。忌避感や拒絶反応が出る前に駄天使が皆へ、改めて強めの結界を張り直した事で、俺達はしっかりとソレと向き合う事が出来ていた。
「言わなくとも、伝わってるとは思うがアレが魔王の居る空間のはずだ。そして、先に話した神の放置した結果の負の最期の成れの果てだ。皆、準備はいいな?」
俺の最終確認だ。必要は本来は皆無だろう。そもそも、こんな所まで付き合ってくれている時点で、皆は当に覚悟は出来ているんだ。
これは、そうだな。俺達の意思を改めて1つに束ねる為の儀式みたいなものだ。俺達は皆、どうしようもない顔をしていたのだろう。俺でさえ、きっとそうだったのだろう。皆の顔を見れば分かる。俺達は皆で頷いては暗き穴へ、ダンジョンへと進入するのだった。




