冒険101─偽りの聖女、涙の意味。
それから連日は思い思いに皆、過ごしたが基本的は俺は誰かしらと一緒に行動をしていた。
汚れドワーフと建築様式や鍛冶屋を訪れては、ああだこうだ言い合ったり、時には物騒僧侶に付き合って、彼の見つけた道場で武器を振るったり、はたまた男性陣で夜の男達の会を開催しては呑みに呑んだりだ。
女性陣? まぁ、うん。俺が初日に出会った少女の話をしてはデートをしてきたとウッカリと漏らしちまったら、彼女達の何かしらの琴線に触れてしまったのだろう。1人1回デートというのが決まってしまっては有無を言わさず、俺は突き合わされた。駄天使とはグルメ巡り、王女ちゃんとは都の街並みやその管理体制を散策して見ては、耳長とは何故か高い所から色々見たいとかで、わざわざ早朝から城壁の上へと登らせて貰ってはグルっと一周するデートを決行していた。アレは本当にデートと呼べるのだろうか? 俺は疑問に苛まされたが、とりあえずは彼女達の機嫌が治っては良くなったので、これ以上は深掘りしない事にした。
そして、数日が経ち、その日がやって来ていた。
「わぁぁぁ!!」と、周辺にこぞって集まった信徒や住民、または遠征軍だろうか。聖堂に一同は集まっては、その教会主催の聖女のお披露目が行われようとしていた。
予定だと、聖女お披露目後はそのまま遠征軍が背後に付き、そのまま魔王軍とおぼしき場所が特定されたので、そこへ遠征へと行く手はずらしい。
「凄い盛り上がりようね! 本当の天使がここに居るっているのに!」
「ははは! 嬢ちゃんが天使? 面白い冗談だ!
噂だと、そうなると、聖女様は目の前の天使様も何十、何百、何千、何万倍も美しいってこった!
ははは!」
「な、なんですってぇ!」
「て、天使様! 落ち着いて下さい。ドードーです。ほら、ドードー」
相も変わらない駄天使だが、本日はそれを聞いていた住民のおやっちゃんがゲストとしてツッコミに回っていた。まぁ、それを聞いた駄天使はものの見事に激おこぷんぷん丸になっているのだが、王女ちゃんが咄嗟に慰めに入っている辺りは流石だ。
「あっ! 見えて来たみたいよ! キミ! 見える?」
「ん? んー?」
隣で耳長がワーワー言ってるが、俺にはその声が一時的に聞こえなくなっていた。
俺の視界が正しければ、大聖堂の扉が開いては現れた聖女と紹介されている存在に見覚えがあったからだった。最初は他人の空似じゃないかと思ったが、間違いない。俺の魔力を、加護を宿した指輪をその左手小指にその聖女と紹介された少女はしていたのだから。
「彼女はとある貴族の生まれの少女でした。ですが、明くる日に無残にも彼女の家族は悪魔に殺されたのです! そうです! 皆様が既に知っているように悪魔は既に聖都マリアージュ外に蔓延っているのです! しかし、恐れる事は有りません! 天は! 神は! 私に、いえ、私達に聖女を遣わしました! 聖女ある所に勝利があるのです! 聖なる遠征軍を束ね、聖女様は神の御心を持って、悪魔を! 魔王を討ち払います! さぁ! 皆様! この素晴らしき門出を祝いましょう! 今こそ! 神の意思を! 神の幸福を!
神の愛を謳いましょう!」
「「神の祝福を! 神の寵愛を! 悪魔に裁きを! 聖女の勝利を! 我らに幸福を!」」
狂ってやがる。
彼女は孤児院暮らしだ。
そして、彼女は親の顔も知らないと言っていた。
いや、そんな事は他人は知る術が無いか。なら、致し方ない。信じるものはその存在が白く見えるものだ。信じたいものを信じてしまうのが愚かにも生を司る者たちの本能にも近い。
だが、それでも──「……助けて」そう、聴こえてしまった。
一瞬、空耳だと思ったが。いや、そうじゃない。これは魔力に乗った想いだ。魔力、魔力だ。そうだ、付与したじゃないか。そうだ、ならこの声は。
「ああ! 皆よ! 聖女様が、皆の祈りに応えて涙を流してくださった! 皆よ! 信徒よ! これが神から聖女へ、そして私達へ贈られた、ささやかでそして、美しい施しなのです! さぁ、皆! 祈りましょう! 神は私達をお見捨てにはならない! 神はその慈悲深い、御心を持って、今も私達を見ていてくださる。さぁ、彼女の涙に祝福の讃歌を!」
そして、周りが讃歌を歌い始めては、それは教会へと強い吸引力を生み出していた。
その歌に交じっては俺の魔力を伝っては俺の心にはずっと「助けて──助けて──助けて」と、あの日1日デートした明るい輝きの笑顔を浮かべたツンデレちゃんの声が響いているのだった。
そして、そのまま聖女を先頭に遠征軍は見送られては魔王軍が居るとおぼしき戦場へと向かっていったのだった。
──「って、アンタどうしたの? ちょっと、待ちなさいって! 急に走り出そうとしないでよ!」っと、気付いたら駄天使に押さえられていた。
「えっ?」と、俺も自身で気付かずに走り出そうとしていたようだった。
「ねぇ、キミ。酷い顔だけれども、大丈夫? 何があったの? ちょっと、待ってて。えっと、確か疲れを癒すようなやつが、アレ? どこにしまったっけ」
そんな慌てたように何かを探す耳長を見ていたら、ささくれだった心が落ち着いて来たようだった。
「いや、大丈夫だ耳長。ありがとう」と、断りを入れては心配そうに俺を押さえていた駄天使も柔らかい手つきで、ゆっくりと離しては離れる。
「主よ、何かあったのか?」
「いや、何かあったんだろうよ。儂にも分かるように教えてくれるんだろうな?」
そう、言われたら頷くしかない。
だが、内容が内容だ。とりあえずは冒険者ギルドに向かっては、ここしか場所が浮かばなかったのだ。ギルドマスターを呼び出してはギルドマスター同席で、ギルド長室を使わせて貰うのだった。




