冒険100─彼女の生まれて初めてのデート。
「わぁ〜綺麗! 見てみて! コレ! ほら!」
「あぁ、そうだな」
宝石とまではいかないが、綺麗に磨かれた鉱石や石の類をあしらった装飾品が多かった。
元々、煌びやかなイメージもあったのだが、うん、なかなか、こう見ると並んでいる。後は服も多かった。物欲しそうに服を見ていたので、買ってやるかと聞いたら「私にはもう、そういう時間も無いから、服が勿体ないわ」と、やんわりと断られてしまった。
「美味しい! ケーキって、こんなに美味しかったのね! 私の知ってるケーキってパウンドケーキ? 孤児院でも特別な日にしか出ないの! こんなに白い生クリーム? をふんだんに使ったケーキは食べた事無かったわ! 後、このチョコレートケーキも凄い美味しいわ! 凄い! 凄い!!」
「こら、落ち着け。ケーキは逃げないから大丈夫だ」
「で、でも。時間が──「そっか、そうだな。なら早く食べて、もっと見たり、食べたりするか!」う、うん! ほら! アナタも早く食べて! もっと、私を案内しなさい! 付き合ってあげるわ!」
「はいはい」
おてんば娘も要素に追加しておくかね。でも、そうやって、笑っている姿が年相応で輝いて見えるとは言えないな。時たま、凄く絶望したような諦観した顔をするものだから、俺は慣れない気遣いを見せながら観光を楽しむのだった。
「綺麗……」
そして、夕方に差し掛かる頃にツンデレちゃんは露店に並べたらたリング──曰く、指輪に目を奪われていた。素人目の俺から見ても良い素材を使っているのは分かる事から、他の露店とは一線を画しているように見える。心なしか店主の服装、身なりが小綺麗だ。
「何か、気になるのはあったか?」
「えっ?! う、ううん! そんな、アタシなんて身につけられるのも限られるし、それに似合わないだろうし」
そんなに否定しなくても、お前には似合ってるぞとも言わないさ。
それに先程、視線を追っていたら装飾は無いが、シンプルな作り故にデザインにこだわりが見える指輪を見ていた。個人的に見ても、これくらいなら身につけていても、何かと誤魔化せそうだと思う。まぁ、多分、見ていた本人もそういう打算的な部分もあって、自然と目を追っていたのだろうが。
「店主、その指輪をくれ」
「えっ!?」
「サイズはこれしか無いが大丈夫かい?」
「ツンデレちゃん、指を出して「え、でも……」良いから、良いから」
「う、うん」
差し出された指に合わせて、指輪を通していくと左手の小指に綺麗に収まった。
「良かったサイズは合うようだな」
「え、でも。アタシ…」
「ほほぅ、女性の左手小指には指輪の意味はチャンスを呼び込むという意味もありますからなぁ。何か打開したい、打破したい、現状を変えたい、そんな人にはオススメですよ」
ナイスだ店主。そして、ポツリと「恋愛運も引き寄せるのですよ」と然りげ無く言っては俺にウインクを投げかけて来るな。でも、ツンデレちゃんは後半の言葉は聞こえてはいなかったようで、チャンスという呼び込みの部分に意識が割かれているようだった。
「コレでいいか?」
「いいの?」
「いいんだよ、俺からの今日のデートのお礼だ」
「で、デート!!」
そんなのアタシ、初めてだし……と顔を茹でダコのように真っ赤にしてはツンデレちゃんは思考を止めてしまったようだった。
「このまま、指に嵌めたままで大丈夫かい?」
「あぁ、大丈夫だ。ラッピングと言うわけじゃないが、包装と言えばいいか、餞別は今、俺が施してやる」
「ほえ?」
そして、ツンデレちゃんの手を包んでは指輪に向けて、俺のささやかな加護を授ける。
「あ、アンタ…何したの?」
「何、ちょっとした悪い事から身を守ってくれる、おまじないをしただけだよ」と、伝えておく。
本当に加護を少しだけ分けるイメージで俺の魔力を籠めただけなのだが。でも、何かしら効果はあるだろう。ツンデレちゃんは何かしらの困難が待ち受けてるだろう事は彼女の言葉から察せられる。
そして、元来た道を屋根伝いに彼女の小さな抗議の声をまた耳元で聞きながら、駆け抜けては路地の裏側でそっと降ろして、ツンデレちゃんとは別れたのだった。
「……あ」
結局、振り返ると折角の1人の休日? を1人で過ごせていない事に俺は気付いたが、まぁ、こういう出会いも1人の休日に入るのか。と、割り切っては宿へと帰るのだった。
その後、俺が戻るのが最後だったらしく、何故か皆、夜は一緒に食べるものだと思っていたみたいで、駄天使が目星を付けていた飲食店へ、俺は皆にドナドナされつつ、夜を過ごしたのだった。




