冒険99─ツンデレちゃん。
「ちょ、ちょっと! 離しなさいよ! 離して! セクハラよ! 私に触れるなんて思わないで! ねぇ、聞いてるの?!」
「うるさい! 耳元で騒ぐな、逃げてるの分かってるだろ? 少しは黙れないのか?」
「なっ! アナタ、誰に口答えしてるか、わかってるの?! あ、アタシは! い、いえ、今は名乗れないけれども、でも! 助けてくれて、ありがとう……でも、助けてくれるからって安易に触れるなんて思わないでよ! 勘違いしないでよね!」
「わかった! 分かったって! もう少し待て、そしたら離すから!」
「ふんっ!」
なんなんだコイツは、これアレか? ツンデレって、やつか? おい、本当にそんな生物がこの世に実在するのか? いや、ここ異世界だけれども。
俺も抱えては耳元で騒がれたせいか、感覚が麻痺してしまったのだろうか? とりあえず、追っていたと思われる輩は巻いただろうし、俺が逃げ込んだ先はバザールだ。まだまだ日が落ちるまでは人が沢山混雑するし、木を隠すなら森の中だ。この少女を隠すのも、人混みの中だとここまで連れて来たのだった。
とりあえず、建物の陰に潜んでは周囲を見ては怪しい視線等を感じないのを確認して、彼女を降ろす。
「ほら、助けたぞ? 感謝しろよ?」
「だ、誰が、アンタなんかに。……ありがとう、助かったわ」
ポツリと付け足すように言ってくるが、耳が少し赤いのを見るに恥ずかしいようだ。うん、ツンデレと君は命名しよう。そう、俺は決めつつツンデレにどうして逃げていたのかを聞いてみた。まぁ、当然気になる訳だからな。逃がした手前聞くさ。
「詳しくはアナタの為にも話せないけれども、アタシの時間ってもう無いの。ずっと孤児院で親も知らないで生きてきて、自分の時間も無くて、何のために生きてるかも分からなくて、でも急に終わりだと知らされたから。アタシ、何かを知りたくて、探したくて、隙を見ては初めて逃げ出したの。アタシって、素直だから、今までそんな事した事無かったから、皆ビックリしてて笑っちゃったわ。でも、道も分からないから、一生懸命走ってたら、アナタに当たったわけ。上手く話せないから、アレだけれども本当よ? 嘘は神に誓って言ってないわよ? 疑うっていうなら、噛みつくからね!」
「別に疑ったりなんかしてないさ。ただ、色々と疑問に思う部分はあるが、聞かない方が良いなら、聞かないでおく。それに最後にいちいち噛みつくように喚くな、うるさいぞ? 後、なんだ、折角だから、お前のそのなんだ? 何かを探すんだろ? 手伝ってやるよ。俺も今日は自由気ままに過ごす予定だったからな」
「ご、ごめんなさい。つ、つい。なんだか、アナタに何か言われたりするとイラッと来ちゃって。いいの? 後悔しない? 嫌にならない? 大丈夫?」
「はぁ、後悔しない、嫌にならない、大丈夫だ。コレで良いか? ほら「な、何?」手を繋ぐぞ。それにそんな野暮ったいと逆に目立つ。クリーン! 「ヒヤァァァァ! な、何すんのよ!」後は髪色も少し変えとくか、後で別れる時にでも戻してやるよ「え? え?」魔法だから気にするな。良く掛けてやってる奴が居るだけだ」
「そ、そう。へぇ……」
そう、言いながらも変わった髪色をニマニマと表情を崩しては弄って、少しだけ身綺麗になった際の痴態にモジモジとしつつもツンデレちゃんは俺の手を握って来るのだった。
「さぁ、行こうかツンデレちゃん」
「つ、ツンデレ?! 何、それ! でも、何だか無性にイラッとしてくるんだけれども! ねぇ!」
「ははは、ほら、行くぞ。1日は思ってるより短いぞ?」
「うぅ……う、うん。分かった。よろしくお願い致します」
ここで、良く言えるじゃないかとか揶揄はしない。
とりあえず、紳士に徹してはエスコートしつつ、俺も初めてのバザールだけれども、色んな商店をツンデレちゃんと散策に繰り出すのだった。




