冷たい川の向こう
夜明け前、サーシャから緊急連絡が入る。
「川を越えた集落で、発熱と嘔吐の患者が多数発生。
物資は届かず、感染の拡大が懸念される。……最悪、コレラの可能性も」
神崎:「水源が汚染されてるな……対応が遅れれば、村全体が危ない」
MORUチームはすぐさまY-01で移動開始。
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到着したのは、氾濫しかけた川の向こうにある集落。
橋は崩れ、車両は入れず、徒歩での渡渉が必要だった。
柊:「水、かなり冷たいですね……しかも濁ってる」
日向:「これ、感染源そのものじゃないですか……!」
神崎は決断する。
「荷物を最低限にして、俺と柊で先に行く。
烏丸、日向はY-01で抗生剤と輸液を準備してくれ」
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川を越えて村に入った神崎と柊は、
床にうずくまる10人以上の患者を目にする。
柊:「これは……急性下痢性疾患。コレラの疑い濃厚です」
幼児が脱水で意識朦朧。老人は血圧がほとんど測定不能。
しかし、家族たちは治療を拒んでいた。
「ワクチン?注射?……それで死んだ人がいたって聞いた」
「薬なんかより、清潔な水と祈りのほうがまだマシだ!」
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神崎は静かに子どもに近づき、口元に冷たい水と指を添える。
「……“信じろ”とは言わない。
けど、俺はこれまで何百人もの命を“つなぐ”手を見てきた。
この手が間違ってたら……お前に謝る。だから今、少しだけ貸してくれ」
その言葉に、1人の母親が静かにうなずいた。
「……やって」
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処置開始。
輸液を確保し、抗生剤を注射。消毒と経口補水も手分けして進める。
日向と烏丸も道具を担いで合流し、Y-01を臨時診療所代わりに運用。
半日後には発熱のピークは下がり、嘔吐も収まった。
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日没、最後の患者の処置を終えたとき。
柊はポツリとつぶやく。
「先生……ワクチンって、“信頼”を打つものなんですね」
神崎:「信じさせるのは無理だ。
でも、“目の前で助ける”って行為は、たとえ言葉が通じなくても、伝わる」
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その夜、子どもたちが石で作った小さな橋の残骸に花を置いた。
“命の橋”だと、現地のスタッフが教えてくれた。