7.巨大ワーム戦!
「見えてきたぞーー!」
デッキにいる男たちが雄たけびを上げる。街から離れて数分。遠くにうごめく謎の物体が見える。ここからの距離にしてはとびぬけて大きい物体も一つ見える。
「あれが、ワーム。気持ち悪い見た目をしてるな・・・」
茶色のつるつるした見た目。肉をパンパンにつめたソーセージ見たいな身体と、あんぐりと開いた口からは不規則に生えたギザギザの歯が見えている。
あんなのに喰われたら胃の中に入るまでに全身穴だらけになって死んでしまうだろう。
「見えたかお前ら!作戦開始だ!」
バルクの声が通信から聞こえてくる。
全員がおう!と意気込み、配置につく。船の後方に括りつけられた糸がピンと張られ、二つの船の間に網が張られる。
船は最大出力で動き出し、フィーンという高音を出しながらスピードを上げる。2隻の間にある木や土をかき集めながら網は前進する。
小柄な兵士は武器を手にし、大柄な男は大砲をいざというときのためにワームに向けている。
アミィは大きな杖を身体の前で握りしめ、魔力を貯めているのか目をつむっている。
僕はというと、やることがなくデッキの隅っこの方で段々とワームが近づいてくるのを眺めていた。
巨大ワームはバルクが言っていた通り、街の建物を丸のみにできそうなサイズだった。周りにも小さ目のワームが数十匹いて、虫嫌いな人が見たら気絶してしまうだろうという光景だった。
「面舵いっぱい!」
ワーム数十匹と巨大ワームが網の手前に来たタイミングで、船を操縦している魔術師が叫び、船の向きを変える。
ワームの群れを中心に円を描くように2隻の船は近づいていく。
「一匹も逃してないか!」「大丈夫全部網の中だ!」「もう少しで向こうとすれ違うぞ!」
デッキにいる男たちが興奮して叫びあっている。
その声につられて僕もドキドキしてきたぞ。
「よし!止まれ!!」
バルクの合図で2隻の船がちょうど真横についたタイミングで船は急ブレーキ。どこにもつかまっていなかった僕は、うぎゃっと前に吹き飛ぶ。
ワームたちは、網の中にとらえられ、身動きができない状態になっていた。巨大ワームが動き、鉄網が揺れるギシギシという振動が船にも伝わってくる。
通信を通さなくてもバルクが叫ぶ声が聞こえる。
「さぁ、アメト、強いのを頼むぜ!」
「ええ、始めるわよ!皆私に合わせて!」
アメトが杖を上空にかざし、詠唱を始めた。他の魔術師たちも詠唱をはじめ、アミィも詠唱を唱え始める。
すると上空に魔法陣が形成されはじめ、風が吹き始める。魔法陣はどんどん大きくなり、ワーム全体をカバーできるほどの大きさになった。
「フレイムピラー!!」
アメトと他の魔術師が魔法陣に向かって杖を向けて叫ぶ。すると魔法陣からワームに向かって巨大な炎の柱が伸び、ワームたちを焼き尽くす!。
炎の勢いで地面が揺れ、熱風が船をゴウンゴウンと揺らす。どこか焼けた肉のにおいもした。
「うわぁぁ!!」
情けない声を出し、熱風で僕はまた転ぶ。
何秒間経っただろうか。僕が立ち上がったころには魔法陣は消え、代わりにワームたちがいたであろう場所は草が燃え尽き、黒い円ができている。巨大ワームもその中心で黒焦げになり、燃えたたばこのように立ち尽くしている。
辺りは焦げ臭いにおいで充満していた。
「やったのか?」
「やったぞ、動いてない!」
ワームたちが一匹残らず倒されたことを確認し、皆喜び始める。
やったな少年!!と知らないおじさんが僕の肩を叩く。特に何もしていないけど、その場の雰囲気に合わせてやりましたね!と返事をしておいた。
アミィ、アメト、バルクも表情が柔らかくなっており、近くにいた人たちと話し合っている。どうやら本当に倒せたらしい。
「お前ら!無事に討伐達成だ!分け前はちゃんと用意するから、ギルドに集合だ!」
輩たちがうぉーっと叫び、腕を突き上げる。何もしてなかったけど、僕にもお金はもらえそうだ、よかった。
船はつないでいた網を切り離し、皆帰りの準備を始める。アメト、バルクは船の中に戻っていった。
一時期はどうなるかと思ったが、無事にけがもなくミッションはクリアした。僕はステータスカードを見てみる。
「やっぱり・・・」
名前の横に書いてあるレベルを見てみるが、昨日と変わらず1。そりゃ、直接倒さないと入らない仕組みにちゃんとなってるよな。もしあの数のモンスターの経験値が入っていればどれほどのレベルになっていただろうか。
とりあえず、今回の報酬で得たお金で武器でも買わないとだな、先が思いやられるとはぁっとため息をついた瞬間。
ぐちょり・・・。
何かが外にあふれ出すような気持ち悪い音。その音は幻聴ではなかった。
他の輩たちも音のする方に目を向けていた。
巨大ワームだ・・・いや、巨大ワームの死体から羽のようなものが生えている。
いや、ワームの中から何かが出てこようとしている!!
誰かが叫ぶ。
「ドラゴンだーーー!!」
安堵の雰囲気から一転。船はパニック状態になった!!
船内にて、アメトとバルク、数名の魔術師たちは、ワームからドラゴンが出現したのを見て言う。
「アメト、計画通りだな。さ、帰って報告だ」
「ええ、彼に報告よ」
テレポートを使い、アメトとバルク、船内の魔術師たちは消えていった。頼りない僕たちを残して。




