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6.戦の準備

「ねぇ、ねぇってば、起きなさいよ」


「うにゃ」


猫のように丸まって寝ている僕の背中を、アミィが杖で突っついてくる。ちょっと痛い。


「もう、出発の時間よ!いつまで寝てるのよ」


「寝させてくれよ、えっと、アミィ・・・さん。僕はひどく落ち込んでいるんだ」


ここは立派な船の上。皆さんが想像している海の上ではなく、陸の上を走る用で、魔法の力で浮いているらしい。すごいファンタジーっぽい。


なぜこんなに落ち込んでいるのかというと、まず一つ目は、パッシブスキルのこと。


昨日、全力疾走で教会に向かった。受付を済ませ、僕より身長が低いロリっ子シスターのところに行き、意気揚々とパッシブのことについて相談した。そしたら、シスターなんて言ったと思う?


「すみません、まだレベルが足りなくて、1つしかつけられません。その・・・レベル1の中から選んでいただく形になるんですが・・・」


「えっと、3つつけられると聞いたんですけど・・・」


「ええ、レベルを上げて体力も十分に上がればつけられますけど、今の段階では・・・」


「なっ、なんと・・・」


盲点だった。そういえば、僕ここに来てからモンスター一匹も倒していないじゃない。


「どっ、どんなスキルならつけられますかね・・・」


「えっとですね・・・この中から選んでいただければ」


で、僕はいったいどんなスキルを付けたと思う?まずレベル1のパッシブがどんなものかというと。


・攻撃力+3UP


・魔力+3UP


・経験値獲得量5%UP


・幸運値10%UP


しょっぱい、しょっぱすぎる!!こんなんで最強になれやしない!


レベル1の僕が攻撃力3上げたとして、スズメの涙程度の増加量じゃないか・・・。

あと、面白い効果のやつもあって。


・歌を歌うと身体が光る。


・足跡が光るようになる。


・受けるダメージ量が倍になる変わりに、暗闇で光る





光るなアホが!!公開処刑か!!自分レベル1のスキル使ってますってみんなに知らせて回るようなものじゃないか!サバイバルに向いてなさすぎるだろ!


てなわけで、僕はその場所で閉店ギリギリまで悩んだ挙句。


・眠った場所がセーフポイントになる


にした。セーフポイントっていろいろ役に立つらしい。そこで食事をとると回復量が上がったり、ワープ先になったり。あとモンスターは近寄ってこなくなるらしい。いかにもサポート向けって感じで地味だし、本当に役に立つのかわからない。


運命にあらがって、攻撃力とか防御力を上げる方向性も考えたけど、自分の転生スキルを最大限に生かす方向性に落ち着いてしまった。とほほ・・・。


まあ、頑張ってレベルを上げればもっといいスキルとれるのかな、と思いつつ、笑顔が引きつっているロリっ子シスターにお別れした。





そして、落ち込んでいる理由2つ目、今回の作戦の僕の役割を聞いたからだ。


早朝、街の門に数十名集められ、バルクが木箱に立ち作戦の説明をした。


「ようし、野郎ども集まったな!作戦はいたってシンプル。2隻の船で鉄の網を引っ張り、ワームの群れを一か所に固める。もちろんボスワームも含めてだ。そして魔術師の集中砲火でワームたちを確実に焼き払う!」


うん、シンプルだ。


ひ弱そうな部下が一名、もやしのような手を挙げる。


「バルク隊長。質問がありやす」


「おう、なんだ?」


「人手がいると聞いて集まってきたんですが、その作戦なら、こんな人数いらないのでは・・・?」


「はぁ~」


バルクはため息をつきながら、木箱から降り、その部下の前に近づく。


「てめえらワームと戦ったことねえのか?いいか、ワームは人間の血が大好物なんだよ。言いたいことはわかるな?」


バルクはその男の心臓を指さす。


「おとりは、お前見たいな血の気がないやつでもな・・・多い!ほうが!いい!」


「ひぃ・・・」


ひ弱な部下は、バルクの勢いに負けて縮こまってしまう。


「それにだ、今までに観測されたことがないって言われる巨大ワームだ。一回の最大火力の攻撃で倒せればいいが、倒せなかった場合を見据えての作戦だ。プラン2、総力戦だ。船には武器と大砲もある。網がちぎられちまったら、魔法が使えないやつはこれで応戦する」


作戦を聞いていた輩たちに緊張感が走る。アメトはそれを和ますように話す。


「安心して、死者は絶対に出さないわ。今回私たち魔術師は全員テレポーションを使える人たちで組んでいる。万が一船が壊されそうな状況になったら、安全地帯まで移動させるわ」


輩たちは、安堵した表情となり、よかった、よかったと話あっている。


集会の跡、輩たちと魔術師たちはそれぞれの船に均等に乗り込む。


僕はバルクに近づき


「えっとバルク隊長!僕は何をすればいいでしょうか!」


昨日転生者として声をかけられた僕だ、何か特別な役割があるのかもしれない!そう思って聞いたのだが。


「んあ?お前聞いてなかったのか?」


バルクはさっきのように僕の心臓を指す。そして一言。


「おとりだ」







「万が一に備えておくのも立派な仕事でしょうに・・・立ちなさいって」


「よしてくれ・・・もう貝になりたい・・・」


アミィは僕の肩を引っ張り起き上がらせようとしてくれる。僕と同い年ぐらいなのにたくましい。


なのに僕ときたら、転生者ってもてはやされて、だけどスキルがだめだめで。パッシブスキルならって思ったけど、それもうまくいかず・・・。そして、今回の作戦はただのおとり。もし総力戦になったとしても、こんなんじゃ戦えない。おとなしく吸血ワームにちゅぱちゅぱされるのがオチだ・・・。


「はぁ、もう、放っておくからね」


アミィはようやくあきらめたのか、僕を置いて船のデッキに上がっていった。僕は船の物置に置いて行かれた。


よーし、出発だ~。


操縦係を任されたであろう男性の魔術師が声を出す。船は前進し始め、ワームの群れまで僕を運び始めた。


バルクとアメトはもう一つの船に乗ったらしい。こっちの船にはアミィと、活気のよい男たち、魔術師数名が乗っている。そして、僕が荷物として乗っている。


「だけど、仕事は仕事だからな・・・」


おとり役だとしても、ちょっとでもお金を分けてもらえるかもしれない。そういう淡い期待を持って僕は起き上がった。


その時。


「・・・ぃ」


?今、誰かの声が聞こえた気がするけど、気のせいか?物置には木箱やもしもの時用の大砲の玉が積まれていた。それらが船の振動で擦れた音だろうか?


僕は疑問を残しつつ、階段を昇った。




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