10.カシマという男
ザザ〜ン
ザザ~ン
ザザ~ン
どこまでも暗い海。太陽に熱されていた浜の砂も今は冷え切っていた。
ザクッ、ザクッ。
誰かが冷たい砂を踏んで洞穴に近づいてくる。茶色のギターケースを背負い、キャップをかぶっている。
洞窟の前に爺さんが壁にもたれかかるようにして座禅を組んで寝ている。その奥には、今日この世界に転生してきたラーシャという少年が毛布にくるまって休んでいる。
ギターを持った男が、木の枝で爺さんを突こうとした瞬間。
爺さんは目にも止まらない速さで男の腕をつかみ、体制を変え、その男を羽交い絞めにする。
「どわっ、いててて!爺さん!俺だ!俺!カシマだよぉ~~!」
「わかっとるわい。相変わらずいきなりあらわれよって!」
数分間、カシマは爺さんに締め上げられていた。
「で、なんの用じゃ」
「いや、ただ顔を見に来たんだ。おっと爺さんあんたじゃねえぜ、奥の子だ」
「奥の子?あのガキがどうしたんだ?」
カシマは奥で寝ているラーシャに視線を送る。
「どうも、転生者とは言えど、過去のお前らのように覇気は感じない」
「そこがいいんだ。ああ見えても、俺の大事なターニングポイントなんだよ」
「何をいってるか、わからんわい」
爺さんははあっとため息をつき、再び座禅を組む。
カシマは、帽子をかぶり直し言う。
「あと、爺さん、明日、約20人分の食料と寝床、服の確保をここに頼む。女性もいるかもしれないから、その辺の配慮も頼むぜ」
「はぁ、今度はお前さん、何をするつもりじゃ?老いぼれて引退したじじぃをこき使うんじゃない」
「俺を締め上げられるほどの力があれば、まだまだ現役だぞ。はぁ、それに起こすのは俺じゃない。あの子だ」
とカシマはラーシャを指さす。
「おぬし、時々予言めいたことをいうな。ほんとに当たるから気味が悪い」
「へへ、それほど頼りにしてるってことだぜ~爺さん、じゃ、そんじゃよろしく~」
そして、カシマは洞窟を出て行った。




