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1.海から来た羊。そしてターニングポイント

別に大統領とか、王様とかになりたかったわけじゃない。

カリスマ性もない。金持ちでもない。ケンカも強くない。なんの力もないってことは、自分がよく知ってる。

ただ、平凡で退屈なこの世界での暮らしを、もっと続けたい。

僕は、そう願っただけなんだ・・・。

ザザ〜ン



ザザ~ン 



ザザ~ン


太陽からの温かい視線。暑い砂浜。程よくぬるい海水。海水が小さな僕の身体を包むように行ったり来たりしてすごく心地よい。

生まれたての赤ちゃんみたいに手足を丸めた状態で僕は砂浜に打ち上げられていた。


「・・・ねん、・・・ねん」


生まれたてホクホクな僕を誰かが木の棒でつついてくる。


「大丈夫か、少年」


しわがれた声で、誰かが話しかけてきている。

もう少し目をつむっていたい気持ちもあるが、返事だけでもしよう。


「う・・・」


口の中が砂と海水で満たされていることに気づく。そんな状態で話そうとするもんだから


「げほっ!げほぉ!」


ほら、言わんこっちゃない。

大きくむせた僕を、しわがれた声の主は優しく僕の背中を撫で、ゆっくりと身体を起こしてくれた。





「わしはここに流れ着く物を集めて売る商売をしているもんだ」


あの後、小さな洞穴に移動した。

びしょびしょになった僕はタオルをはおり、焚き火に当たっていた。

爺さんは自家製スープが入ったコップを僕に手渡しす。腕は細いが筋肉質で、頼り甲斐のある印象を受けた。


「そんな仕事があるんですね・・・」


へへへと笑いながらとりあえずの相づち。そんな僕だけど内心穏やかじゃない。ついさっきまで、違う場所にいたような、何か大切なこと忘れているような気がして、頭の中がもやもやしている。


そもそもここはどこなんだ?


スープ覗き込むと身に覚えがない僕の顔が映し出される。


もじゃもじゃの白い髪。我ながら、実際の年齢よりも幼く見られそうなキュートな顔をしている。

いや、僕そもそも何歳だ?


「えっと、意味不明なこと聞いてるのは自分でもわかってるんですが、全然記憶がなくて・・・ここはどこですか?」


「やはり、そうか・・・。あんた、転生してきたんだな。」


「テンセイ?」


聞いたことないテンセイという言葉を繰り返し、僕はスープを一口。食欲をそそるいい香りだ。


「そのテンセイ・・・というのは?」


「極々まれだが、海から物ではなく人が流れ着いてくることがある」


爺さんは僕が今さっきまで倒れていた砂浜を指さす。


「流れ着いた人は、皆口を揃えてここはどこ、私は誰と言う。生まれた場所も不明。だが、誰よりも優れたスキルや知識を持ち、この世界に変化をもたらす。」


「そんな彼らをいつしか転生者と呼ぶようになったのじゃ」


次に夕日に照らされている海、黒く尖った島を指さす。


「昔から多くの冒険家たちが海の向こうを調査しようと派遣された。だが、永遠と続く海があるだけで、何も見つからなかった」


「あの島も攻略するため多くの冒険者が派遣されていた。だが今はもう誰も近づかない。亡くなったやつも多いと聞く。あの島を開拓すればなにかつかめるとわしは睨んでいるんだが、なにせ金がないのでな、考えるだけだ」


がはは、と爺さんは笑い、痩せ細った喉でスープを一気飲み。


「兄ちゃん、名前は?」


「それも、まったく思い出せなくて・・・、どこから来たのかも」


「みんな最初はそういう、名前も自分が何が得意なのかも」


「今までも僕みたいな人が?」


「ああ、最近はめったになかったが、過去にも数人わしが見つけたことはある」


爺さんは、椅子から立ち上がり、洞窟の外へ僕を手招く。


「この崖を超えた先に町とギルドがある、そこに鑑定士もいる。そこで名前やステータスを確認するといい。明日、そこまで案内する。」


「ステータス・・・?」


ギルドや、ステータスやらわからない用語を、お爺さんは細かく説明をしてくれた。話し込んでいるうちに、日は落ち、あたりは闇に包まれた。


お爺さんから厚めの毛布を借り、そのまま洞窟の中で眠りについた。







数時間前?


「やぁ、こんにちは」

「へ?」


ここは図書館だろうか?それとも目の前にいる男の書斎というべきだろうか。お互いに椅子に座り対面していた。


「さて君のステータスは、どうしようか。転生スキルだけ簡単に決めてあとはテンプレで・・・」


「ちょっ、ちょっと待ってください!」


目の前の少年は、本から顔を上げて僕を見る。僕の目をまん丸とさせた顔を見て笑いながら答える。


「あはは、ごめんよ。一日に数百人もキャラクリしてると話をしてる暇がなくてね。僕はこの世界の神だよ、名前は秘密」


その神と名乗る少年はウインクし笑顔でそういった。


「えっと・・・この世界?」


「そう、君は前の世界で役目を終えて、この世界にやってきた。この空間はその準備をする場所って感じかな。」


少年は引き出しから紙を一枚取り出し、僕の方へ紙をふわっと飛ばす。ふわふわと僕の手元に降りてきた紙には、この世界の成り立ちやルールやらが書いてあるようだ。


「毎回この世界はどうのこうのって説明するのは、大変だからそこにまとめさせてもらったよ。ささっと目を通しちゃって。質問は3つまで」


「ええぇ・・・」


困惑することばかりだ。なぜ自分がここにいるのかさえ分からないというのに。


一枚の紙には、『この世界の歩き方』と書かれている。


1.あなたはこの世界の次の転生者として選ばれました。特別な転生スキルと僕からのプレゼントを持ってスタートできます。

2.この世界でどう生きるかは君次第!冒険者となって世界を開拓するリーダーに!?それとも頭脳を生かして王様に?

3.ただし気を付けて。凶悪な魔物もたくさんいるよ。油断してるとやられちゃうかも・・・。


「魔族・・・」


おっかない。


4.だけど心配いりません。僕のスーパーな神の力で、死んでも生き返れます!


5.ただし命を大事にしてほしいので、デスペナルティを追加しました!


「デスペナルティ?」


「そう。僕のやさしさで簡単に生き返る世界にしてたらね、みんな命を大事にしなくなっちゃってさ~。つい最近追加したんだ」


6. 死ぬと獲得した経験値、所持している武器、所持金などを含めたアイテムをすべてロスト。自分で設置したセーフポイントなどすべて削除されます。そして平均3年間、この世界に戻ってくることはできません。」


「平均?ってことは、個人差があるってこと?」


「そう。運がいい人はすぐに戻ってこれるけど、そうじゃない人は・・・うーん最大で15年ぐらい魂としてさまよってたかな。必ず3年間だったら保険金詐欺とか横行しちゃいそうでさ」


「そっ、そういう理由なんだ」


神様も大変ということだろうか。


7.最後に、この世界は出来立てです。要件・要望は僕のところまで直接きてね


「えっとこれだけ?もっとこう、この世界の歴史とか・・・」


「どうせ教えても、転生するときに全部忘れちゃうんだよ」


「この時間は意味なかったってこと?!」


そう怒らないで、と神は椅子に深く座りなおす。


「さて君の質問に3回答えた。今度は僕からの質問だよ。新しい世界にどんなスキルを持って生まれたい?」


「どんなって・・・急に言われても・・・」


「なんでもいいよ。前世でこんな才能があればなーっていうのが定番だけど」


「いや、前世の記憶っていうのも・・・いや?」


自分が前世でどんな生活をしていたのか見当もつかず、記憶もないが。なんとなく頭に浮かんでくる。

楽しい風景では絶対になかったように思う。


「ただ、そのなんというか。平和に暮らしたいというか、争いもない世界にしたいというか・・・。なんでこう思うのかも正直わからないんだけど」


「ふむふむ、それで?」


神はペンを取り出し、本に何かを書き加えている。


「それで・・・、そうですね。しっかり食べて寝て・・・あっ、病気しない身体とかどうです?」


「ああ、もうすでにそんな人がいたなぁ。結構最初の方に」


「ええっ、かぶっちゃダメなんですか?!」


「不老不死とか、スーパーパワーとかはメジャー過ぎてもうないなぁ。ごめんね~」


ジリリリリリ!!!

突然机の上の時計が鳴り響く。

「わっ、何?」


「あちゃ~時間切れだね。もう次の魂を呼ばないと」


「えっ、あの僕のス・・・スキルは?」


「ちょっと適当に決めとくから、君はもう出発して大丈夫!」


「大丈夫じゃないです!!」


突然身体の周りが青白い光に包まれはじめ、身体が浮いてきた!


「ちょっ、ちょっと!」


「大丈夫、どうせ忘れるから!」


「忘れるとかじゃなくて、怖いんですが!」


段々視界も狭まると同時に、音も聞こえなくなってくる。そして眠気も。


「あっ、そうだ」


神は自分のズボンのあたりを指さす。


「贈り物はもう君のポケットの中だよ。これだけは覚えといて。もし、また会えたら世界の話をゆっくりしよう」







ザザーン





ザザーン




ザザーン




波の音、太陽の光が細く束ねられ、洞窟内に差し込んでくる。


「う・・・ん」


僕は目を覚ます。身体を起こし背伸びする。

お爺さんは向かいの壁にもたれかかるようにして座禅を組んで寝たようだ。


「・・・よく寝れたな」


久しぶりにこんなに寝れたような感覚。夢も見ていたような気がするが、いつも忘れてしまう。

忘れてしまうけれど・・・ぼんやりとした記憶の中で、ポケットに何かあるような気がする。

実際にポケットを触ってみる。すると小さな金属の塊がポケットの下に沈んでいた。


「これは・・・」


ポケットから取り出し、日にかざして見てみる。それは、小さな銀色の鍵だった。


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