第一幕(4)
ピアノを奏でていた少年は、ジャジャーンと和音で締めた後、踊り終えたルノの前へスキップしていく。
「相変わらずキレッキレじゃん、ルノ~」
毛先に群青を滲ませた、夕日色の髪を無造作に掻き上げて、少年はルノの肩を叩く。
「ミーシャ、伴奏助かった」
「なんのなんの。踊る時に録音魔法ってのも味気ないでしょ」
普段なら専属の奏者がいるが、今日は自主稽古で授業が始まるのは明日からのため、ピアニストが不在だった。
そういう時に伴奏役を買って出るのが、昔からどんな楽器の演奏も得意なミーシャ――本名をミシェル・サティだ。彼もまた、リュミエール座で常に上位をキープするプリエールダンサーだ。
「お前は踊らなくていいのか」
「明日の組分け試験? はは、んなのヨユーっしょ」
ミシェルは肩をすくめるように笑って、稽古場でそれぞれ練習をしているクラスメイトたちを眺める。
「どうせ初等部の頃から、俺らの顔ぶれなんて大して変わんないんだからさ……」
教師は手を打ち「では休憩を挟んだら、次は今の振付を魔法ありで!」と告げる。稽古場にいる誰もが、“魔法あり”の指示に、慣れた様子で対応していた。
この場にいる少年少女たちは誰も、この学園へやってきた初等部の頃から、魔力を持つ特別な血筋——貴族たちなのだから。