第六幕(6)
「エリアンヌのお家に行っていいの!?」
「そう言ってるでしょ」
エリーはステラを見ず、他三人へ視線を向ける。
「みんなも来るでしょ?」
「行く行く~」
「ええ、ぜひ」
エリーは返答したミーシャとディアナの後、ルノの方を見た。
「ルノは?」
エリーに尋ねられ、ルノの視線は少しの間ステラの方へ向いた。ステラの方は、背にしているので視界に入っていない。行ける?行ける?とそわそわエリーの方を見ている。
「ああ。俺も行く」
その返事までの、ささやかな挙動を、エリーは見ていた。わずかに金の睫毛を伏せる。
「そう」
エリーは短く言い、聖堂の一階へ降りていった。その後ろから軽やかに、ミーシャが後を追う。
「エリアンヌお嬢様が歩いて帰っていいわけ?」
「近いんだから、馬車待ってる方が面倒よ」
冷やかすように言うミーシャを、エリーは軽くあしらう。
聖堂を出てから、爪先立ちで跳ねているステラを伴い、エリーとディアナ、ルノとミーシャは大通りを歩いていった。全員リュミエール座の制服を着ており、すれ違う街の人たちは視線を向けて目が合えば会釈をした。ただ、ステラの姿を目に止めると誰もが訝しげな表情を浮かべた。
「……あの子も、リュミエール座の生徒さんなのかしら」
「きっと初等部の子が連れてきてもらっているんじゃないか?」
そんな声が往来の人の中からちらほらと聞こえてくる。
学園内と同じく、ステラは周りからの声を気にした様子はなかった。一緒に歩くエリーたち四人は、もう何となく、ステラがこれらの誹りを一切気にしないことに驚かなくなっていた。
この、いかにもな田舎娘は、自分たちが想像しているよりはるかに特殊な境遇を過ごしている。ただ遠方の土地で生まれ育った平民なら、まだ想定ができる。リュミエール座の施設や食事に驚くのもわかるが、ステラはプリエールそのものを、舞台で見たことがないと言うのだ。
だが、踊れる。靴もなしで、絶大な魔法を生み出すことができる。
(今年の、夏至祭……)
エリーは、肩越しに自分の後をついてくるステラを見る。さっきの力強い“薔薇の精”の舞が脳裏に鮮やかに蘇った。
同時に、彼女が先ほど放った言葉が、重なる。
『みんなのプリエールの方がすごい』
技巧の話ではないことは、エリーにも理解できた。プリエールの本質は、祈りの力。
「…………」
もし、自分たちがステラと等しいだけの魔法を舞えたら……。
(今年の夏至祭は……すごいものが踊れるんじゃ)
「エリー」
後ろからルノに声をかけられて、エリーははっと我に返る。




