第五幕(11)
「なんで言わないのよ!」
「えっ、な、何を……?」
突然声を荒げたエリーに対し、ステラはびくっと肩を跳ねさせた。今の流れで、何か自分が言うべき事柄があっただろうか? とステラは慌てて考える。
「えっ、あ、見てくれて、ありがとう?」
「なんでそういう態度なのよ! 言えばいいでしょ、私たちが……私が、下手だからって!!」
屈辱的なセリフだった。それでもエリーは、あえて口にした。使う言葉を変えて自分を誤魔化すのは嫌だった。それこそ、自分に対しての侮蔑のように思った。
「何度やっても上手く揃わないのは、私たちが劣っているせいだって」
「エリー……アンヌ?」
ステラは戸惑って、エリーを見つめる。
踊っても踊っても満足いく出来にならないこと、そして優れているのが自分が侮っていた平民の少女であること、そういう今まで味わってこなかった葛藤がエリーを突き動かしていた。
エリーは、抑えていた感情を吐き出す。
「簡単に踊れるんでしょ、“薔薇”だけじゃない、妖精たち全員、あんたが一人で踊ることだってできるでしょ!」
よく通るその声が、稽古場の高い天井に響き渡った。
ステラはしばらく黙ったまま悄然と立っていたが、困ったように笑って、頷いた。
「うん……できるよ」
エリーは自分でそう言ったが、ステラの返答を聞いて弾かれたように顔を上げた。
昼過ぎの日差しが、窓から差し込んでステラの頬を照らす。ステラの顔に浮かぶのは、寂しそうな笑みだった。
「『妖精の祝祭』教えてもらって、わかったんだ。この演目、先生が踊っていた『妖精の灯火』と同じだって」
確かに“先生”が踊っていたのも、毎年この時期だった。陽から陰へ、暦が切り替わる夏至の頃。ステラの村で“先生”が舞を納めるようになってから、荒れ果てていた村の周りに緑が戻り始め、そして夜が長くなるのに合わせて跋扈していた魔物たちが息をひそめた。
ステラは村での日々を思い出す。
「『妖精たちの祝祭』で発動される魔法を、一人で発動させられるようにアレンジしたのが、『妖精の灯火』。私も教えてもらったから、だから多分、一人で踊れる」
そんなことない、みんなと一緒じゃないと踊れないよ、とステラは謙遜で言い繕わなかった。エリーは口を噤み、眉根を寄せる。心のどこかで、その謙虚な否定を期待していた自分がいた気がした。それを自覚し、思わず目を伏せる。
「でも」
ステラの声音が変わった気がして、エリーが思わず顔を上げた。




