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第五幕(6)


 配役決めから一週間後。


 舞台は二部構成、まずは前半の妖精たちが順番に現れていく第一幕をまとめようということになったが——。


「ちょ、ちょっ、ごめ、もう一回いい?」


 ミーシャが清風の振付の途中で、手を上げて録音魔法を止めた。稽古場の空間にかけていた魔法が途切れ、簡易の音楽が止む。

 頭を掻きながら、もう片手でさっきの振りの流れを反芻する。


「あー、今ミスったぽいな……なんか音合わなかったわ。ごめん、もう一回俺んとこだけでいいから、やり直してい?」


 謝る仕草をするミーシャに対し、ディアナも片手を上げておずおずと申し出た。


「“藤花”の場面ももう一度やりたいから、花の舞踏シーンからお願いできるかしら?」


 “清風”の妖精が登場する前のシーン、“藤花”と“薔薇”の舞は、振付自体のミスは見られなかった。だがディアナの中で、いくつか引っかかっている部分があった。


「もうっ、それならもう一度、通しでやればいいでしょ!」


 どこから踊り直すかのやりとりをしていると、エリーが痺れを切らしたように言い放つ。


 練習を始めてから……この流れを幾度と繰り返していた。


「うん! いいよ!」


 ステラだけが、練習を始めた時と同じ、溌剌とした笑顔で首肯する。これもまた、ステラの加わった第一組には見慣れた光景となってしまった。


「……いや、一度休憩を挟んだ方がいい」


 ミーシャが音楽をかけ始めるより前に、ルノが口を挟んだ。まだ午後の稽古時間はたっぷり残っていたが、すでにミーシャもディアナも、そしてエリーにさえ疲労感が滲んでいた。平然としているのはルノと、そして不気味なほど、踊るほど元気になっていくステラだけだ。


「それ! それだな、俺たちが必要なのは、休憩!」

「そうね……一度、休んで仕切り直した方がいいかも」


 ミーシャとディアナが頷き、エリーもまた不承不承というかたちで従った。ステラだけが、どうして今休憩にしようと言い出したのかわかっていなかったが、もちろん反対はしなかった。


「うん。わかった」


 じゃあその間にお手洗い行ってくるねー! そう元気良く言うとステラは、鼻歌交じりに飛び跳ねながら廊下へ出て行った。


 そのくすんだ銀髪が見えなくなると同時、ミーシャは稽古場の床に倒れ込んだ。


「っはぁ~~~~……『妖精たちの祝祭』って、こんなムズかったっけー??」


 稽古場に用意された水差しからグラスを持ってくると、ディアナはミーシャの分を手元に置く。


「そんなはず、なかったし……みんな正確に踊れていると思うんだけど……」


 サンキュ、とディアナに声をかけ、ミーシャは身を起こしてグラスを飲み干す。


「んじゃなんでこんな、“合ってない”感じすんだろ?」


 一息に飲み切って、ミーシャは空笑いする。


「…………」


 その答えを、この場にいる全員がわかっていて、口を噤んだ。


 最初に即興で踊った、五人バージョンの『妖精たちの祝祭』は、元の振付のままでも抜群の踊りやすさを感じていた。だがステラが、二度目、三度目と“樹木”の妖精を舞うたびに、鏡で見る自分たちの舞台がバランスの悪いものに感じられていた。振付のミスはない。なのに練習を重ねるほど、全体的に“釣り合いの取れてなさ”が増していた。


 そして目の肥えた四人は、一つの推量に帰結する。



 ステラの、初見の舞踏が自分たちと同じレベルだった、のだ。




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